養生訓 / 巻第六・慎病
一春は陽氣發生し、冬の閉藏にかはり、人の肌膚和して、表氣やうやく開く。然るに餘寒猶烈しくして、風寒に感じやすし。つゝしみて風寒にあたるべからず。感冒咳嗽の患なからしむべし。草木の發生するも、餘寒にいたみやすし。是を以て、人も餘寒をおそるべし。時にしたがひ身を運動し、陽氣を助けめぐらして發生せしむべし。
新字:一春は陽気発生し、冬の閉蔵にかはり、人の肌膚和して、表気やうやく開く。然るに余寒猶烈しくして、風寒に感じやすし。つゝしみて風寒にあたるべからず。感冒咳嗽の患なからしむべし。草木の発生するも、余寒にいたみやすし。是を以て、人も余寒をおそるべし。時にしたがひ身を運動し、陽気を助けめぐらして発生せしむべし。
書き下し
一春は陽気発生し、冬の閉蔵にかはり、人の肌膚和して、表気やうやく開く。然るに余寒猶烈しくして、風寒に感じやすし。つつしみて風寒にあたるべからず。感冒咳嗽の患なからしむべし。草木の発生するも、余寒にいたみやすし。是を以て、人も余寒をおそるべし。時にしたがひ身を運動し、陽気を助けめぐらして発生せしむべし。
現代語訳
春は陽気が生き生きと生じ、冬の閉じこもる時期から変わって、人の肌がやわらぎ、体の表の気がしだいに開きます。それなのに余寒がなお厳しいので、風や寒さに感じやすいものです。慎んで風や寒さにあたってはいけません。風邪や咳の患いがないようにすべきです。草木が芽吹くときも、余寒に傷みやすいものです。ですから人も余寒を恐れるべきです。時に従って体を動かし、陽気を助けめぐらせて生き生きとさせるべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第六・慎病一冬は天地の陽気とぢかくれ、人の血気をさまる時なり。心気を閑にしをさめて保つべし。あたため過して、陽気を発し泄すべからず、上気せしむべからず。衣服をあぶるに、少しあたためてよし。熱きを忌む。衣を多くかさね、又は火気を以て、身をあたため過すべからず。熱湯に浴すべからず。労力して汗を発し、陽を泄すべからず。
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『養生訓』巻第六・慎病一秋は夏の間肌開け、七八月は残暑も猶烈しければ、腠理いまだとぢず。表気いまだ堅からざるに、秋風すでにいたりぬれば、感じてやぶれやすし、慎んで風涼にあたり過すべからず。病ある人は、八月残暑退きて後、所々に灸して、風邪をふせぎ、陽を助けて、痰咳のうれひをまぬかるべし。
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『養生訓』巻第六・慎病一四月は純陽の月なり。尤色慾を禁ずべし。雉鶏など温熱の物食ふべからず。一四時の内、夏月尤保養すべし。霍乱、中暑、傷食、泄瀉、瘧痢の病おこりやすし。生、冷の飲食を禁じて、慎みて保養すべし、夏月此病おこれば、元気へりて大に労す。
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『養生訓』巻第六・慎病一夏は発生の気いよいよさかんにして、汗もれ、人の肌膚大に開く故、外邪入りやすし。涼風に久しくあたるべからず、沐浴の後風に当るべからず。且夏は伏陰とて陰気かくれて腹中にある故、食物の消化する事おそし。多く飲食すべからず。温なる物を食ひて、脾胃をあたたむべし。冷水を飲むべからず。すべて生、冷の物を忌む。冷麺多く食ふべからず。虚人は尤泄瀉のうれひおそるべし。冷水に浴すべからず。暑甚しき時も、冷水を以て面目を洗へば眼を損ず、冷水にて手足洗ふべからず、睡中に扇にて人にあふがしむべからず、風にあたり臥すべからず、夜外に臥すべからず、夜外に久しく坐して、露気にあたるべからず、極暑の時も極めて涼しくすべからず、日に久しく曝せる熱物の上に坐すべからず。
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『養生訓』巻第一・総論上又風寒暑湿の外邪をおそれふせぎ、起居動静を節にし慎み、食後には歩行して身を動かし、時々導引して腰腹を撫ですり、手足をうごかし労動して血気をめぐらし、飲食を消化せしむべし。一所に久しく安坐すべからず。是皆養生の要なり。養生の道は病なき時つつしむにあり。病発りて後、薬を用ひ、針灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし。
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『養生訓』巻第六・慎病一千金方に曰く、冬温なる事を極めず、夏涼しき事をきはめず。凡一時快き事は、必ず後の災となる。一病生じては、心のうれひ、身の苦甚し。其上、医をまねき、薬を飲み、炙をし、針をさし、酒をたち、食をへらし、さまざまに心をなやまし、身をせめて、病を治せんとせんよりは、初に内欲をこらへ、外邪をふせげば、病おこらず、薬を服せず、針灸せずして、身のなやみ心の苦なし。初しばしの間つつしみ忍ぶは、少しの心づかひなれど、後の患なきは、大なるしるしなり。後に薬と針灸を用ひ、酒食をこらへつつしむは、其苦甚しけれど益すくなし。古語に、終をつつしむ事は、始に於てせよといへり。万の事、始によくつつしめば、後に悔なし。養生の道、ことさらかくのごとし。一飲食色慾の内欲をほしいままにせずして、かたく慎み、風寒暑湿の外邪をおそれ防がば、病なくして、薬を用ひずとも患なかるべし。もし慾をほしいままにして慎まず、只脾腎を補ふ薬治と食治とを頼まば、必ずしるしなかるべし。
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