養生訓 / 巻第五・洗浴
一沐浴して風にあたるべからず。風にあはば、はやく手を以て皮膚をなでするべし。一女人經水來る時、頭を洗ふべからず。一溫泉は諸州に多し。入浴して宜しき症あり、あしき症あり。よくもなく、あしくもなき症あり。凡此三症有り、よくえらんで浴すべし。湯治してよき病症は外症なり。打身の症、落馬したる病、高き所より落ちて痛める症、疥癬など皮膚の病、金瘡、はれ物の久しく癒えがたき症、およそ外病には神效あり。又中風、筋引きつりしゞまり、手足しびれたる症によし。內症には相應せず。されども、氣欝、不食、積滯、氣血不順など、凡虛寒の病症は、湯に入りあたゝめて、氣めぐりて宜しき事あり。外症の速に效あるにはしかず、かろく浴すべし。
新字:一沐浴して風にあたるべからず。風にあはば、はやく手を以て皮膚をなでするべし。一女人経水来る時、頭を洗ふべからず。一温泉は諸州に多し。入浴して宜しき症あり、あしき症あり。よくもなく、あしくもなき症あり。凡此三症有り、よくえらんで浴すべし。湯治してよき病症は外症なり。打身の症、落馬したる病、高き所より落ちて痛める症、疥癬など皮膚の病、金瘡、はれ物の久しく癒えがたき症、およそ外病には神効あり。又中風、筋引きつりしゞまり、手足しびれたる症によし。内症には相応せず。されども、気欝、不食、積滞、気血不順など、凡虚寒の病症は、湯に入りあたゝめて、気めぐりて宜しき事あり。外症の速に効あるにはしかず、かろく浴すべし。
書き下し
一沐浴して風にあたるべからず。風にあはば、はやく手を以て皮膚をなでするべし。一女人経水来る時、頭を洗ふべからず。一温泉は諸州に多し。入浴して宜しき症あり、あしき症あり。よくもなく、あしくもなき症あり。凡此三症有り、よくえらんで浴すべし。湯治してよき病症は外症なり。打身の症、落馬したる病、高き所より落ちて痛める症、疥癬など皮膚の病、金瘡、はれ物の久しく癒えがたき症、およそ外病には神効あり。又中風、筋引きつりしじまり、手足しびれたる症によし。内症には相応せず。されども、気欝、不食、積滞、気血不順など、凡虚寒の病症は、湯に入りあたためて、気めぐりて宜しき事あり。外症の速に効あるにはしかず、かろく浴すべし。
現代語訳
髪を洗ったり湯浴みをしたりして風にあたってはいけません。風にあたったら、早く手で皮膚を撫でさするべきです。女性は月経のときに髪を洗ってはいけません。温泉は諸国に多くあります。入浴してよい症状があり、悪い症状があります。よくも悪くもない症状もあります。およそこの三つの症状があるので、よく選んで入浴すべきです。湯治してよい病は外の病です。打ち身、落馬した病、高い所から落ちて痛む症状、疥癬など皮膚の病、刀傷、腫れ物が長く治らない症状など、およそ外の病には神のような効き目があります。また中風で筋が引きつり縮んだり、手足がしびれたりする症状によいものです。内の病には合いません。けれども、気のふさがり、食欲のなさ、食べ物のとどこおり、気血の不順など、およそ虚して冷える病は、湯に入って温めて、気がめぐってよいことがあります。外の病に速く効くのには及ばないので、軽く入浴すべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第五・洗浴又入浴して益もなく害もなき症多し。是は入浴すべからず。又入浴して大に害ある病症あり。ことに、汗症、虚労、熱症に尤いむ。妄に入浴すべからず。湯治して相応せず、他病おこり死せし人多し。慎むべし。此理を知らざる人、湯治は一切の病によしと思ふは、大なるあやまちなり。本草の陳蔵器が説考へみるべし、湯治の事をよく説けり。凡入浴せば、実症の病者も、一日に三度より多きを忌む。虚人は一両度なるべし。日の長短にもよるべし。しげく浴する事甚忌む。つよき人も、湯中に入りて、身をあたため過すべからず。はたに腰かけて、湯を杓にてそそぐべし。久しからずして早く止むべし。あたため過し、汗を出すべからず。大に忌む。毎日かろく浴し、早くやむべし。
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『養生訓』巻第五・洗浴一熱湯に浴するは害あり。冷熱はみづから試みて沐浴すべし。快にまかせて、熱湯に浴すべからず。気上りてへる。殊に目をうれふる人こごえたる人熱湯に浴すべからず。一暑月の外、五日に一度沐ひ、十日に一度浴す。是古法なり。夏月に非ずして、しばしば浴すべからず。気快しといへども気へる。
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『養生訓』巻第五・洗浴一湯浴はしばしばすべからず。温気過ぎて肌開け、汗出で、気へる。古人、十日に一たび浴す、むべなるかな。ふかき盥に、温湯少し入れて、しばし浴すべし。湯あさければ、温過ぎずして気をへらさず。盥ふかければ風寒にあたらず。深き温湯に久しく浴して、身をあたため過すべからず。身熱し、気上り、汗出で、気へる。甚害あり。又甚温なる湯を、肩背に多くそそぐべからず。
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『養生訓』巻第五・洗浴一身に小瘡ありて熱湯に浴し、浴後風にあたれば、肌をとぢ、熱内にこもりて、小瘡も肌の内に入りて、熱生じ、小便通ぜず、腫る。此症甚、危し。多くは死す。つつしんで、熱湯に浴して後風にあたるべからず。俗に、熱湯にて小瘡を内にたてこむると云ふ。左にはあらず、熱湯に浴し、肌表開きたる故に、風に感じやすし。涼風にて熱を内にとづる故、小瘡も共に内に入るなり。
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『養生訓』巻第五・洗浴一あつからざる温湯を、少し盥に入れて、別の温湯を肩背より少しづつそそぎ、早くやむれば、気よくめぐり、食を消す。寒月は身あたたまり、陽気を助く、汗を発せず。如此すれば、しばしば浴するも害なし。しばしば浴するには、肩背は湯をそそぎたるのみにて、垢を洗はず、只下部を洗ひて早くやむべし。久しく浴し、身を温め過すべからず。
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『養生訓』巻第五・洗浴日数は七日二七日なるべし。是を俗に一廻二廻と云ふ。温泉をのむべからず、毒あり。金瘡の治のため湯治して疵癒えんとす。然るに温泉の相応せるを悦んで、飲まばいよいよ早くいえんと思ひて飲みたりしが、疵大にやぶれて死せり。
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