養生訓 / 巻第四・飲食下
一夏月、器中にふたをして、久しくありて熱氣に蒸鬱し、氣味惡しくなりたる物、食ふべからず。冬月、霜に打たれたる菜、又のきの下に生じたる菜、皆食ふべからず。是皆陰物なり。一瓜は風涼日、及び秋月淸涼の日不可食。極暑の時食ふべし。
新字:一夏月、器中にふたをして、久しくありて熱気に蒸鬱し、気味悪しくなりたる物、食ふべからず。冬月、霜に打たれたる菜、又のきの下に生じたる菜、皆食ふべからず。是皆陰物なり。一瓜は風涼日、及び秋月清涼の日不可食。極暑の時食ふべし。
書き下し
一夏月、器中にふたをして、久しくありて熱気に蒸鬱し、気味悪しくなりたる物、食ふべからず。冬月、霜に打たれたる菜、又のきの下に生じたる菜、皆食ふべからず。是皆陰物なり。一瓜は風涼日、及び秋月清涼の日不可食。極暑の時食ふべし。
現代語訳
夏に器の中にふたをして長く置き、熱気に蒸されて味や香りが悪くなったものは食べてはいけません。冬に霜に打たれた菜や、軒下に生えた菜も、みな食べてはいけません。これらはみな陰物です。瓜は、風の涼しい日や秋の清涼な日には食べてはいけません。ひどく暑い時に食べるべきです。
解説
前条の「陰物」の考えを具体例で補った短い条です。夏場の蒸れた作り置き、霜に傷んだ菜、日当たりの悪い軒下の菜が挙げられ、いずれも生気を失ったものとして退けられています。瓜のような体を冷やす食べ物は暑い盛りにこそ合い、涼しい日には控えるという指摘は、季節と体の状態に合わせて食べ物を選ぶ東洋の養生の基本です。冷たい果物や飲み物を季節を問わずとりがちな現代にも、体を冷やしすぎない工夫として生かせます。
この章句が説くこと
陰物季節瓜食事養生
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一四時、老幼ともに、あたたかなる物くらふべし。殊に夏月は伏陰内にあり。わかく盛なる人も、あたたかなる物くらふべし。生冷を食すべからず。滞りやすく、泄瀉しやすし。冷水多く飲むべからず。一夏月瓜菓生菜多く食ひ、冷麺をしばしば食し、冷水を多く飲めば、秋必ず瘧痢を病む。凡病は故なくしておこらず。かねてつつしむべし。
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