養生訓 / 巻第二・総論下
是ふるくけがれたる氣を吐き出して、新しき淸き氣を吸入るゝなり。新とふるきとかふるなり。是を行ふ時、身を正しく仰ぎ、足をのべ臥し、目をふさぎ、手をにぎりかため、兩足の間去ること五寸、兩臂と體との間も、相去ることおのおの五寸なるべし。一日一夜の間、一兩度行ふべし。久しくしてしるしを見るべし。氣を安和にして行ふべし。
新字:是ふるくけがれたる気を吐き出して、新しき清き気を吸入るゝなり。新とふるきとかふるなり。是を行ふ時、身を正しく仰ぎ、足をのべ臥し、目をふさぎ、手をにぎりかため、両足の間去ること五寸、両臂と体との間も、相去ることおのおの五寸なるべし。一日一夜の間、一両度行ふべし。久しくしてしるしを見るべし。気を安和にして行ふべし。
書き下し
是ふるくけがれたる気を吐き出して、新しき清き気を吸入るるなり。新とふるきとかふるなり。是を行ふ時、身を正しく仰ぎ、足をのべ臥し、目をふさぎ、手をにぎりかため、両足の間去ること五寸、両臂と体との間も、相去ることおのおの五寸なるべし。一日一夜の間、一両度行ふべし。久しくしてしるしを見るべし。気を安和にして行ふべし。
現代語訳
これは古く汚れた気を吐き出して、新しく清らかな気を吸い入れることです。新しい気と古い気を入れ替えるのです。これを行うときは、体を正しく仰向けにし、足を伸ばして横になり、目を閉じ、手を握り固め、両足の間は五寸離し、両ひじと体の間もそれぞれ五寸離しなさい。一日一夜の間に一、二度行いなさい。久しく続ければ効き目が見えるでしょう。気を安らかに和やかにして行いなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一千金方に、常に鼻より清気を引入れ、口より濁気を吐出す。入るる事多く、出す事すくなくす。出す時は、口をほそく開きて、少し吐くべし。一常の呼吸のいきは、ゆるやかにして、深く丹田に入るべし、急なるべからず。
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『養生訓』巻第二・総論下一老人は、つよく痰を去る薬を用ふべからず。痰をことごとく去らんとすれば元気へる。是古人の説なり。一呼吸は、人の鼻よりつねに出入る息なり。呼は出づる息なり。内気を吐くなり。吸は入る息なり、外気を吸ふなり。呼吸は人の生気なり、呼吸なければ死す。人の腹中の気は、天地の気と同じくして、内外相通ず。人の天地の気の中にあるは、魚の水中にあるが如し。魚の腹中の水も、外の水と出入して同じ。人の腹中にある気も天地の気と同じ。されども腹中の気は、臓腑にありて旧くけがる。天地の気は新しくして清し。時々鼻より外気を多く吸入るべし。吸入るるところの気、腹中に多くたまりたるとき、口中より少しづつしづかに吐き出すべし。あらく早く吐き出すべからず。
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『養生訓』巻第五・五官一入門曰、導引の法は保養中の一事なり。人の心はつねに静なるべし、身はつねに動かすべし。終日安坐すれば病生じ易し、久立久行より、久臥久坐は、尤人に害あり。一導引の法を毎日行へば、気をめぐらし、食を消して、積聚を生ぜず。朝いまだ起きざる時、両足をのべ、毒気をはき出し、おきて坐し、頭を仰きて両手を組み、向へ張出し、上に向ふべし。歯をしばしばたたき、左右の手にて、項をかはるがはる押す。其次に、両肩をあげ、くびを縮め、目をふさぎて、俄に肩を下へさぐる事三度。次に面を両手にて度々なで下し、目を目かしらより目じりにしばしば撫で、鼻を両手の中指にて六七度撫で、耳輪を両手の両指にて挟み、撫で下す事六七度、両手の中指を両耳に入れさぐり、しばしふさぎて両方へひらき、両手をくみ、左へ引く時は、かうべ右をかへり見、右へ引くときは、左へかへりみる。
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『養生訓』巻第五・五官一夜臥すには、必ず側にそばだち、わきを下にして臥すべし。仰き臥すべからず。仰き臥せば、気ふさがりておそはるる事あり。胸の上に手をおくべからず。寝入りて気ふさがりて、おそはれ易し。此二いましむべし。一夜ふして、いまだ寝入らざる間は、両足をのべて臥すべし。寝入らんとする前に、両足をかがめ、わきを下にして、そばだち臥すべし。是を獅子眠と云ふ。一夜に五度寝ねかへるべし。胸腹の間に気滞らば、足をのべ、胸腹を手を以てしきりになで下し、気上る人は、足の大指をしきりに多く動すべし。人によりて、かくのごとくすれば、あくびをしばしばして、滞りたる気を吐き出す事あり。大に吐き出すを忌む。寝入らんとする時、口を下にかたぶけ臥すべからず。
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『養生訓』巻第二・総論下一調息の法、呼吸をととのへ静にすれば、息やうやく微なり。弥久しければ、後は鼻中に全く気息なきが如し。只臍の上より、微息往来する事をおぼゆ。如此すれば神気定まる。是気を養ふ術なり。呼吸は一身の気の出入する道路なり、あらくすべからず。一養生の術、まづ心法をよくつつしみ守らざれば行はれがたし。心を静にして、さわがしからず、いかりをおさへ、慾をすくなくして、つねに楽んでうれへず。是養生の術にて、心を守る道なり。心法を守らざれば養生の術行はれず。故に心を養ひ身を養ふの工夫二なし、一術なり。
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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