夜船閑話 / 本文
彭祖が曰く、和神導氣の法當さに深く、密室を鎖し、牀を案し、席を煖め、枕の高さ二寸半、正身偃臥し、瞑目して心氣を胸膈の中に閉ざし、鴻毛を以て鼻上につけて動ざること三百息を經て、耳聞く處なく、目見る處なく、斯の如くなる則は、寒暑も侵かすこと能はず、蜂蠆も毒すること能はず、壽三百六十歲是眞人に近かしと。
新字:彭祖が曰く、和神導気の法当さに深く、密室を鎖し、牀を案し、席を煖め、枕の高さ二寸半、正身偃臥し、瞑目して心気を胸膈の中に閉ざし、鴻毛を以て鼻上につけて動ざること三百息を経て、耳聞く処なく、目見る処なく、斯の如くなる則は、寒暑も侵かすこと能はず、蜂蠆も毒すること能はず、寿三百六十歳是真人に近かしと。
書き下し
彭祖が曰く、和神導気の法当さに深く、密室を鎖し、牀を案し、席を煖め、枕の高さ二寸半、正身偃臥し、瞑目して心気を胸膈の中に閉ざし、鴻毛を以て鼻上につけて動ざること三百息を経て、耳聞く処なく、目見る処なく、斯の如くなる則は、寒暑も侵かすこと能はず、蜂蠆も毒すること能はず、寿三百六十歳是真人に近かしと。
現代語訳
彭祖は言った。神を和ませ気を導く法は、まさに深く密室を閉ざし、寝台を整え、敷物を温め、枕の高さを二寸半にして、身をまっすぐにして仰向けに寝て、目を閉じ、心の気を胸の中に閉ざし、鴻の羽毛を鼻の上につけても動かないほど静かな呼吸で三百回を経れば、耳に聞こえるものもなく、目に見えるものもなくなる。このようになれば、寒さ暑さも侵すことができず、蜂やさそりも毒することができず、寿命は三百六十歳となり、真人に近くなる、と。
解説
八百歳まで生きたと伝えられる伝説の長寿者彭祖の養生法を引く。静かな部屋で仰向けに寝て、鼻先に置いた羽毛が揺れないほど静かでゆっくりした呼吸を続ける、という方法である。寿命の数字は伝説そのものだが、呼吸をきわめて細く長くすることで、外の刺激に動じない心身をつくるという考え方は、今日のゆっくりした呼吸法にも通じている。眠る前に仰向けになり、呼吸を静めていく習慣として試すことができる。
この章句が説くこと
彭祖呼吸法静寂仰臥養生長寿
関連する章句
-
『夜船閑話』序至人の云く、此は是神仙長生不死の神術なり。中下は世寿三百歳なるべし。其余は計り定むべからず。予則ち歓喜に堪へず、精修怠らざる者大凡三年、心身次第に健康に気力次第に勇壮なることを覚ふ。此において重ねて心に竊に謂へらく、縦ひ此真修を修し得て彭祖が八百の歳時を保ち得るも、唯是一箇頑空無智の守屍鬼ならくのみ。老狸の旧窠に睡るが如し。終に壊滅に帰せん。何が故ぞ、今既に独りも葛洪鉄拐張華費張が輩を見ず。如かじ四弘の大誓を憤起し菩薩の威儀を学び、常に大法施を行じ、虚空に先つて死せず、虚空に後れて生ぜざる底の不退堅固の真法身を打殺し、金剛不壊の大仙身を成就せんにはと。
-
『夜船閑話』本文又蘇内翰が曰く、已に飢へて方に食し、未だ飽かずして先止む。散歩逍遥し務めて腹をして空からしめ、腹の空なる時に当て即ち静室に入り、端坐黙然として出入の息を数へよ。一息よりかぞへて十に到り、十より数へて百に到る。百より数へ将ち去て千に到て、此身兀然として此心寂然たること虚空と等し。斯の如くなること久ふして一息おのづから止まる。出でず入らざる時、此息八万四千の毛竅の中より雲蒸し、霧起るが如く、無始劫来の諸病自ら除き、諸障自然に除滅することを明悟せん。譬へば盲人の忽然として眼を開くが如けん。
-
『夜船閑話』本文庸流は常に心気をして上に恣にす。上に恣にする則は、左寸の火、右寸の金を尅して、五官縮まり疲れ、六親苦しみ恨む。是故に漆園曰く、真人の息は是を息するに踵を以てし、衆人の息は是を息するに喉を以てす。
-
『夜船閑話』本文此時人に尋ねて路頭を指すことを用ひず。只要す、尋常言語を省略して、爾の元気を長養せんことを。是故に云ふ、目力を養ふ者は常に瞑し、耳根を養ふ者は常に飽き、心気を養ふ者は常に黙すと。
-
『夜船閑話』本文許俊が云く、蓋し気下焦に在る則は、其息遠く、気上焦に有る則は、其息促まる。上陽子が曰く、人に真一の気有り、丹田の中に降下する則は、一陽また復す。若人始陽初復の候を知らむと欲せば、暖気を以て是が信とすべし。大凡生を養ふの道、上部は常に清凉ならんことを要し、下部は常に温暖ならんことを要せよ。
-
『夜船閑話』本文夫大道分れて両儀あり、陰陽交和して人物生る。先天の元気中間に黙運して、五臓列り経脉行はる。衛気営血互に昇降循環する者、昼夜に大凡五十度、肺金は牝蔵にして膈上に浮び、肝木は牡蔵にして膈下に沈む。心火は大陽にして上部に位し、腎水は大陰にして下部を占む。五臓に七神あり、脾腎各々二神を蔵くす。呼は心肺より出で、吸は腎肝に入る。一呼に脉の行くこと三寸、一吸に脉の行くこと三寸、昼夜に一万三千五百の気息あり、脉一身を巡行すること五十次、火は軽浮にして、つねに騰昇を好み、水は沈重にして常に下流を務む。