夜船閑話 / 序
至人の云く、此は是神仙長生不死の神術なり。中下は世壽三百歳なるべし。其餘は計り定むべからず。予則ち歡喜に堪へず、精修怠らざる者大凡三年、心身次第に健康に氣力次第に勇壯なることを覺ふ。此において重ねて心に竊に謂へらく、縱ひ此眞修を修し得て彭祖が八百の歳時を保ち得るも、唯是一箇頑空無智の守屍鬼ならくのみ。老狸の舊窠に睡るが如し。終に壞滅に歸せん。何が故ぞ、今既に獨りも葛洪鐵拐張華費張が輩を見ず。如かじ四弘の大誓を憤起し菩薩の威儀を學び、常に大法施を行じ、虚空に先つて死せず、虚空に後れて生ぜざる底の不退堅固の眞法身を打殺し、金剛不壞の大仙身を成就せんにはと。
新字:至人の云く、此は是神仙長生不死の神術なり。中下は世寿三百歳なるべし。其余は計り定むべからず。予則ち歓喜に堪へず、精修怠らざる者大凡三年、心身次第に健康に気力次第に勇壮なることを覚ふ。此において重ねて心に竊に謂へらく、縦ひ此真修を修し得て彭祖が八百の歳時を保ち得るも、唯是一箇頑空無智の守屍鬼ならくのみ。老狸の旧窠に睡るが如し。終に壊滅に帰せん。何が故ぞ、今既に独りも葛洪鉄拐張華費張が輩を見ず。如かじ四弘の大誓を憤起し菩薩の威儀を学び、常に大法施を行じ、虚空に先つて死せず、虚空に後れて生ぜざる底の不退堅固の真法身を打殺し、金剛不壊の大仙身を成就せんにはと。
書き下し
至人の云く、此は是神仙長生不死の神術なり。中下は世寿三百歳なるべし。其余は計り定むべからず。予則ち歓喜に堪へず、精修怠らざる者大凡三年、心身次第に健康に気力次第に勇壮なることを覚ふ。此において重ねて心に竊に謂へらく、縦ひ此真修を修し得て彭祖が八百の歳時を保ち得るも、唯是一箇頑空無智の守屍鬼ならくのみ。老狸の旧窠に睡るが如し。終に壊滅に帰せん。何が故ぞ、今既に独りも葛洪鉄拐張華費張が輩を見ず。如かじ四弘の大誓を憤起し菩薩の威儀を学び、常に大法施を行じ、虚空に先つて死せず、虚空に後れて生ぜざる底の不退堅固の真法身を打殺し、金剛不壊の大仙身を成就せんにはと。
現代語訳
至人は言った。これは神仙の長生不死の神術である。中程度や下程度の者でも寿命は三百歳になるだろう。それ以上はとても計り定められない、と。わたしは喜びに堪えず、怠らずに修めること三年ほどで、心身がしだいに健やかになり、気力がしだいに勇ましくなるのを感じた。そこで重ねて心にひそかに思った。たとえこの真の修法を修め得て、彭祖の八百年の寿命を保てたとしても、それはただ一個のうつろで智慧のない屍の番人にすぎない。年老いた狸が古巣で眠っているようなものだ。結局は滅び去るだろう。なぜなら、今となっては、葛洪、鉄拐、張華、費長房のような仙人を一人も見ないではないか。それよりは、四つの大誓願を奮い起こし、菩薩の振る舞いを学び、常に大いに法を施し、虚空に先立って死なず、虚空に後れて生じない、不退堅固の真の法身を打ち出し、金剛のように壊れない大仙身を成就するほうがよい、と。
解説
この章句が説くこと
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『夜船閑話』序馬年今歳古稀に越へたりといへども、半点の病患なく歯牙全く揺落せず、眼耳次第に分明にして、動もすれば靉靆を忘る。毎月両度の法施終に怠倦せず、請に佗方に応じて三百五百の海衆を聚会して、或は五旬七旬を経に録に雲水の所望に随て胡説乱道する者大凡五六十会に及ぶといへども、終に一日も罷講斎を鎖さず。身心健康気力は次第に二三十歳の時には遥かに勝されり。是皆彼の内観の奇功に依ることを覚ふ。
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『夜船閑話』序各々西東五六里が間に分れて旧舎廃宅、老院破廟、借て以て菴居の処として清苦す。朝艱暮辛、昼餒夜凍、口に投ずる者は菜葉麦麩、耳に触るゝ者は熱喝垢罵、骨に徹する者は瞋拳痛棒、見る者顙を攅め、聞者肌汗す。鬼神もまた涙を浮べつべく、魔外もまた掌を合せつべし。其初め来る時は、宋玉何晏が美貌有て、肌膚光沢凝れる膏の如くなる者も、久しからずして恰も杜甫賈嶋が形容枯槁、顔色憔悴するが如く、或は屈子に沢畔に逢ふが如し。参玄軀命を顧みざる底の勇猛の上士にあらざるよりんば、何の楽み有てか、片時も湊泊することを得んや。是故に往々に参窮度に過ぎ、清苦節を失する族は、肺金いたみかじけ水分枯渴して、疝癖塊痛難治の重症を発せんとす。
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『夜船閑話』序此において諸子歓喜作礼して密々に精修す。各々悉く不思議の奇功を見る。功の遅速は、進修の精麁に依るといへども、大半皆全快す。各々内観の奇功を讃美して休まず。師の曰く、儞が輩心病全快を得て以て足れりとすることなかれ。転々治せば転々参ぜよ。転々悟らば転々進め。
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『夜船閑話』本文彭祖が曰く、和神導気の法当さに深く、密室を鎖し、牀を案し、席を煖め、枕の高さ二寸半、正身偃臥し、瞑目して心気を胸膈の中に閉ざし、鴻毛を以て鼻上につけて動ざること三百息を経て、耳聞く処なく、目見る処なく、斯の如くなる則は、寒暑も侵かすこと能はず、蜂蠆も毒すること能はず、寿三百六十歳是真人に近かしと。