夜船閑話 / 序
若し此秘要を修せんと欲せば、且らく工夫を抛下し話頭を拈放して先須らく熟睡一覺すべし。其未だ睡りにつかず眼を合せざる以前に向て、長く兩脚を展べ、强く踏みそろへ、一身の元氣をして臍輪氣海、丹田腰脚、足心の間に充たしめ、時々に此觀を成すべし。我此の氣海丹田、腰脚足心、總に是我が本來の面目、面目何の鼻孔かある。我が此の氣海丹田、總に是我が本分の家郷家郷何の消息かある。我が此の氣海丹田、總に是我が唯心の淨土、淨土何の莊嚴かある。我が此の氣海丹田、總に是我が己身の彌陀、彌陀何の法をか說くと、打返し打返し常に斯くの如く妄想すべし。
新字:若し此秘要を修せんと欲せば、且らく工夫を抛下し話頭を拈放して先須らく熟睡一覚すべし。其未だ睡りにつかず眼を合せざる以前に向て、長く両脚を展べ、强く踏みそろへ、一身の元気をして臍輪気海、丹田腰脚、足心の間に充たしめ、時々に此観を成すべし。我此の気海丹田、腰脚足心、総に是我が本来の面目、面目何の鼻孔かある。我が此の気海丹田、総に是我が本分の家郷家郷何の消息かある。我が此の気海丹田、総に是我が唯心の浄土、浄土何の荘厳かある。我が此の気海丹田、総に是我が己身の弥陀、弥陀何の法をか説くと、打返し打返し常に斯くの如く妄想すべし。
書き下し
若し此秘要を修せんと欲せば、且らく工夫を抛下し話頭を拈放して先須らく熟睡一覚すべし。其未だ睡りにつかず眼を合せざる以前に向て、長く両脚を展べ、强く踏みそろへ、一身の元気をして臍輪気海、丹田腰脚、足心の間に充たしめ、時々に此観を成すべし。我此の気海丹田、腰脚足心、総に是我が本来の面目、面目何の鼻孔かある。我が此の気海丹田、総に是我が本分の家郷家郷何の消息かある。我が此の気海丹田、総に是我が唯心の浄土、浄土何の荘厳かある。我が此の気海丹田、総に是我が己身の弥陀、弥陀何の法をか説くと、打返し打返し常に斯くの如く妄想すべし。
現代語訳
もしこの秘要を修めようと思うなら、しばらく工夫を投げ出し、公案を手放して、まずはぐっすり一眠りしなさい。まだ眠りにつかず目を閉じないうちに、両足を長く伸ばし、強く踏みそろえ、全身の元気を、臍のまわり、気海、丹田、腰と脚、足の裏の間に満たして、ときどき次のように観想しなさい。私のこの気海丹田、腰脚足心こそが、すべて私の本来の面目である。その面目に、どんな鼻の穴があろうか。私のこの気海丹田こそが、すべて私の本当のふるさとである。そのふるさとに、どんな便りがあろうか。私のこの気海丹田こそが、すべて私の心の浄土である。その浄土に、どんな飾りがあろうか。私のこの気海丹田こそが、すべて私自身の阿弥陀仏である。その阿弥陀仏は、どんな法を説くというのか。このように繰り返し繰り返し、常に思い描きなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『夜船閑話』本文公若し心炎意火を収めて丹田及び足心の間におかば、胸膈自然に清涼にして一点の計較思想なく、一滴の識浪情波なけん。是真観清浄観なり。云ふことなかれ、しばらく禅観を抛下せんと。仏の言はく、心を足心にをさめて、能く百一の病を治すと。阿含に酥を用るの法あり、心の労疲を救ふこと尤妙なり。天台の摩訶止観に病因を論ずること甚だ尽せり。治法を説くことも亦甚だ精密なり。十二種の息あり、よく衆病を治す。臍輪を縁して豆子を見るの法あり。其大意、心火を降下して丹田及び足心に収るを以て至要とす。但病を治するのみにあらず、大に禅観を助く。
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『夜船閑話』序妄想の功果つもらば、一身の元気いつしか腰脚足心の間に充足して、臍下瓠然たること、いまだ篠打ちせざる鞠の如けん。恁麼に単々に妄想し将ち去て、五日七日乃至二三七日を経たらむに、従前の五積六聚、気虚労役等の諸症底を払て平癒せずんば、老僧が頭を切り持ち去れ。
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『夜船閑話』序稿中何の説く処ぞ。曰く、大凡生を養ひ長寿を保つの要、形を錬るにしかず。形を錬るの要、神気をして丹田気海の間に凝らしむるにあり。神凝る則は気聚る。気聚る則は、即ち真丹成る。丹成る則は形固し。形固き則は神全し。神全き則は寿がし。是仙人九転還丹の秘訣に契へり。須らく知るべし、丹は果して外物に非ざることを。千万唯心火を降下し、気海丹田の間に充たしむるに有るらくのみ。
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『夜船閑話』本文蓋し五無漏の法あり。儞の六欲を去け、五官各々其職を忘るゝ則は、混然たる本源の真気彷彿として目前に充つ。是彼の大白道人の謂ゆる我が天を以て事る所の天に合する者なり。孟軻氏の謂ゆる浩然の気是をひきいて臍輪気海丹田の間に蔵めて歳月を重ねて、是を守一にし去り、是を養て無適にし去て、一朝乍ち丹竈を掀翻する則は、内外中間、八紘四維、総に是一枚の大還丹。此時に当て初て自己即ち是天地に先つて生せず、虚空に後れて死せざる底の真箇長生久視の大神仙なることを覚得せん。
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『夜船閑話』序是を憐み是を愁て、師不予の色有る者連日、乍ち忍俊不禁にして雲頭を按下し、老婆の臭乳を絞つて是に授るに内観の秘訣を以てす。乃ち云く、若是参禅弁道の上士心火逆上し、身心労疲し、五内調和せざることあらんに、鍼灸薬の三つを以て是を治せんと欲せば、縦ひ華陀扁倉といへども、輙く救ひ得ること能はじ。我に仙人還丹の秘訣あり、儞が輩試に是を修せよ、奇功を見ること、雲霧を披いて皎日を見るが如けん。
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『夜船閑話』序此において真正参玄の上士両三輩を得て、内観と参禅と共に合せ並らべ貯へて、且つ耕し且つ戦ふ者蓋し茲に三十年。年々一員を添へ二肩を增し得て、今既に二百衆に近かし。其中間方来の衲子、労屈疲倦の族、或は心火逆上し正に発狂せんとする底を憐み、密かに此内観の至要を伝授し、立所に快癒せしめ、転々悟れば転々進ましむ。