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夜船閑話 / 序

是を憐み是を愁て、師不豫の色有る者連日、乍ち忍俊不禁にして雲頭を按下し、老婆の臭乳を絞つて是に授るに內觀の秘訣を以てす。乃ち云く、若是參禪辨道の上士心火逆上し、身心勞疲し、五内調和せざることあらんに、鍼灸藥の三つを以て是を治せんと欲せば、縱ひ華陀扁倉といへども、輙く救ひ得ること能はじ。我に仙人還丹の秘訣あり、儞が輩試に是を修せよ、奇功を見ること、雲霧を披いて皎日を見るが如けん。

新字:是を憐み是を愁て、師不予の色有る者連日、乍ち忍俊不禁にして雲頭を按下し、老婆の臭乳を絞つて是に授るに内観の秘訣を以てす。乃ち云く、若是参禅弁道の上士心火逆上し、身心労疲し、五内調和せざることあらんに、鍼灸薬の三つを以て是を治せんと欲せば、縦ひ華陀扁倉といへども、輙く救ひ得ること能はじ。我に仙人還丹の秘訣あり、儞が輩試に是を修せよ、奇功を見ること、雲霧を披いて皎日を見るが如けん。

書き下し

是を憐み是を愁て、師不予の色有る者連日、乍ち忍俊不禁にして雲頭を按下し、老婆の臭乳を絞つて是に授るに内観の秘訣を以てす。乃ち云く、若是参禅弁道の上士心火逆上し、身心労疲し、五内調和せざることあらんに、鍼灸薬の三つを以て是を治せんと欲せば、縦ひ華陀扁倉といへども、輙く救ひ得ること能はじ。我に仙人還丹の秘訣あり、儞が輩試に是を修せよ、奇功を見ること、雲霧を披いて皎日を見るが如けん。

現代語訳

師はこれを憐れみ、これを憂えて、何日も浮かない顔をしておられたが、たちまち見過ごせなくなって、高いところから降りてこられ、老婆が臭い乳をしぼるように懇切に、内観の秘訣を授けられた。そして言われた。もし禅に参じ道を修める優れた者が、のぼせ上がって、身も心も疲れ果て、五臓の調子が乱れたとき、鍼と灸と薬の三つで治そうとすれば、たとえ名医の華陀や扁鵲、倉公であっても、たやすく救うことはできないだろう。私には仙人の還丹の秘訣がある。おまえたち、試しにこれを修めてみよ。驚くべき効き目を見ることは、雲や霧を払って輝く太陽を見るようであろう。

解説

弟子たちの不調を見て、白隠は深く心を痛め、ついに秘訣を授ける。老婆の臭乳を絞るは、禅僧が親切すぎるほど丁寧に教えることを自嘲していう言葉である。心火逆上は、気が頭にのぼって興奮と疲労が抜けない状態を指し、今でいうストレス性の心身の不調に近い。鍼灸や薬では治らないと言い切るのは、原因が心の使い方にあるからだ。部下の不調に気づき、自ら手を差し伸べる指導者の姿として読める。

この章句が説くこと

内観心火逆上不調指導者思いやり養生

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