夜船閑話 / 本文
心を下に專らにする則は、九卿儉を守り百僚約を勤めて、常に民間の勞疲を忘るゝこと無し。農に餘まんの粟あり、婦に餘まんの布有て、群賢來り屬し、諸侯恐れ服して、民肥へ國强く、令に違するの烝民なく、境を侵すの敵國なし。國刁斗の聲を聞くことなく、民戈㦸の名を知らず。
新字:心を下に専らにする則は、九卿倹を守り百僚約を勤めて、常に民間の労疲を忘るゝこと無し。農に余まんの粟あり、婦に余まんの布有て、群賢来り属し、諸侯恐れ服して、民肥へ国强く、令に違するの烝民なく、境を侵すの敵国なし。国刁斗の声を聞くことなく、民戈㦸の名を知らず。
書き下し
心を下に専らにする則は、九卿倹を守り百僚約を勤めて、常に民間の労疲を忘るゝこと無し。農に余まんの粟あり、婦に余まんの布有て、群賢来り属し、諸侯恐れ服して、民肥へ国强く、令に違するの烝民なく、境を侵すの敵国なし。国刁斗の声を聞くことなく、民戈㦸の名を知らず。
現代語訳
心を下の民に専ら向けると、大臣たちは倹約を守り、役人たちは質素に努めて、常に民の暮らしの疲れを忘れることがない。農民には余った穀物があり、女たちには余った布があって、賢者たちが集まってきて仕え、諸侯は恐れて従い、民は豊かに肥え、国は強くなり、命令に背く民はなく、国境を侵す敵国もない。国は夜警の銅鑼の音を聞くことがなく、民は矛や戟という武器の名を知らない。
解説
前の段と対になり、上に立つ者が心を下に向けたときの国の姿を描く。上が倹約し、現場の苦労を忘れず、民に余裕があれば、賢者が集まり、争いは起こらない。兵器の名さえ知らないほど平和になる、という結びは理想の姿だ。組織に置き換えれば、経営陣が現場の疲れに心を配り、働く人に余力があるとき、自然と優秀な人材が集まり、内紛も外部との衝突も起きにくくなる。養生と経営は同じ原理だという主張である。
この章句が説くこと
統治倹約経営人材平和現場
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