夜船閑話 / 本文
蓋し生を養ふことは國を守るが如し。明君聖主は常に心を下に專にし、暗君庸主は常に心を上に恣にす。上に恣にする則は、九卿權に誇り、百僚寵を恃んで、曾て民間の窮困を顧ること無し、野に菜色多く國餓莩多し。賢良潜み竄れ、臣民瞋り恨む。諸侯離れ叛き、衆夷競ひ起つて終に民庶を塗炭にし、國脉永く斷絕するに到る。
新字:蓋し生を養ふことは国を守るが如し。明君聖主は常に心を下に専にし、暗君庸主は常に心を上に恣にす。上に恣にする則は、九卿権に誇り、百僚寵を恃んで、曽て民間の窮困を顧ること無し、野に菜色多く国餓莩多し。賢良潜み竄れ、臣民瞋り恨む。諸侯離れ叛き、衆夷競ひ起つて終に民庶を塗炭にし、国脉永く断絶するに到る。
書き下し
蓋し生を養ふことは国を守るが如し。明君聖主は常に心を下に専にし、暗君庸主は常に心を上に恣にす。上に恣にする則は、九卿権に誇り、百僚寵を恃んで、曽て民間の窮困を顧ること無し、野に菜色多く国餓莩多し。賢良潜み竄れ、臣民瞋り恨む。諸侯離れ叛き、衆夷競ひ起つて終に民庶を塗炭にし、国脉永く断絶するに到る。
現代語訳
思うに、生命を養うことは国を守ることに似ている。賢明な君主や聖なる王は、常に心を下の民に向け、暗愚な君主や凡庸な王は、常に心を上でほしいままにする。上でほしいままにすると、大臣たちは権力を誇り、役人たちは君主の寵愛を頼みにして、民の暮らしの苦しみを顧みることがない。野には飢えて青ざめた顔の者が多く、国には飢え死にする者が多い。賢く善良な人々は身を潜めて隠れ、臣下も民も怒り恨む。諸侯は離れて背き、周囲の異民族は競って立ち上がり、ついには民衆を塗炭の苦しみに陥れ、国の命脈は永く断ち切られるに至る。
解説
養生を国家の統治にたとえる、この書の中でも経営者に最も響く段である。上に立つ者が民の側に心を向けず、上の世界だけで好き勝手をすると、側近は権力を誇り、現場の苦しみは顧みられず、優れた人は去り、ついには国が滅びる。体でいえば、気が頭に上ったまま下へ降りない状態がこれにあたる。組織の上層部が現場を見なくなったとき何が起こるかを、そのまま描いていると読むことができる。
この章句が説くこと
統治養生経営現場リーダー組織
関連する章句
-
『不動智神妙録』諫言 其一 忠を尽くす如此君臣上下善人にして、欲薄く奢を止むる時は、国に宝満ちて民も豊かに治り、子の親をしたしみ、手足の上を救ふが如くならば、国は自ら平に成るべし、是れ忠の初なり、この金鉄の二心なき兵を、以上様々の御時御用に立てたらば、千万人を遣ふとも心のまゝなるべし、則ち先きに云ふ所の千手観音の一心正しければ、千の手皆用に立つか如く、貴殿の兵術の心正しけれは、一心の働自在にして数千人の敵をも一劒に随へるが如し、是れ大忠にあらずや、
-
『呻吟語』外篇・品藻・人の自然の情を得るは難し人の不敢不然の情を得るは易く、人の自然の情を得るは難し。秦・漢而後は皆な人の不敢不然の情を得る者なり。
-
尉繚子・兵教下其の利を喪うこと無く、其の時を奪うこと無く、其の政を寛にし、其の業を夷らかにし、其の弊を救わば、則ち以て天下に施すに足る。
-
論語・子張篇孟氏、陽膚をして士師たらしむ。曾子に問う。曾子曰く、「上其の道を失いて、民散ずること久し。如し其の情を得ば、則ち哀矜して喜ぶこと勿かれ。」
-
『墨子』號令國を安んずるの道は、道、地に任ずるより始まる。地、其の任を得れば則ち功成り、地、其の任を得ざれば則ち勞して功無し。人も亦た此を為す。備え、先に具えざる者は以て主を安んずる無し。吏卒民、多く心の一ならざる者は、皆な其の将長に在り。諸そ賞罰を行い及び治むること有る者は、必ず公より出づ。王、數しば人をして行き勞わしめ、邉城關塞を守り、蠻夷に備うるの勞苦なる者に賜い、其の守率の財用の餘り有ると足らざるとを舉げ、地形の當に邉を守るべき者、其の器備の常に多き者を舉ぐ。邉の縣邑は、其の樹木の惡しきを視れば、則ち用を少なくす。田、辟けざれば、食を少なくす。大屋・草盖無ければ、乗を用うるを少なくす。財多ければ、民、食を好む。内堞を為り、内に行棧し、器備を其の上に置く。城上の吏・卒・養は、皆な舍を道の内に為り、各おの其の隔部に當たる。養は十二人。符を為る者を養吏一人と曰い、諸門を辦護す。門者及び守禁有る者は、皆な事無き者をして其の旁らに稽留するを得しむる無かれ。令に従わざる者は戮す。敵人、但だ至らば、千丈の城は、必ず郭、之に近づき、主人、利し。千丈を盡くさざる者は迎うる勿かれ。敵の居曲、衆少を視て之に應ず。此れ守城の大體なり。其の此の中に在らざる者は、皆な心術と人事と之を參う。
-
説苑・說叢王者、下に臨みて衆を治むる所以を知れば、則ち群臣畏服す。言を聽き事を受くる所以を知れば、則ち蔽欺せられず。萬民を安利する所以を知れば、則ち海內必ず定まる。忠孝もて上に事うる所以を知れば、則ち臣子の行備わる。凡そ劫殺せらるる所以の者は、道術を知りて以て其の臣下を御せざればなり。凡そ吏其の職に勝れば則ち事治まり、事治まれば則ち利生ず。其の職に勝えざれば則ち事亂れ、事亂るれば則ち害成る。