夜船閑話 / 序
此において諸子歡喜作禮して密々に精修す。各々悉く不思議の奇功を見る。功の遲速は、進修の精麁に依るといへども、大半皆全快す。各々內觀の奇功を讃美して休まず。師の曰く、儞が輩心病全快を得て以て足れりとすることなかれ。轉々治せば轉々參ぜよ。轉々悟らば轉々進め。
新字:此において諸子歓喜作礼して密々に精修す。各々悉く不思議の奇功を見る。功の遅速は、進修の精麁に依るといへども、大半皆全快す。各々内観の奇功を讃美して休まず。師の曰く、儞が輩心病全快を得て以て足れりとすることなかれ。転々治せば転々参ぜよ。転々悟らば転々進め。
書き下し
此において諸子歓喜作礼して密々に精修す。各々悉く不思議の奇功を見る。功の遅速は、進修の精麁に依るといへども、大半皆全快す。各々内観の奇功を讃美して休まず。師の曰く、儞が輩心病全快を得て以て足れりとすることなかれ。転々治せば転々参ぜよ。転々悟らば転々進め。
現代語訳
そこで弟子たちは喜んで礼拝し、ひそかに精を出して修めた。それぞれみな不思議な効き目を見た。効き目の早い遅いは、修める熱心さの細かさ粗さによって違ったが、大半はみな全快した。それぞれ内観の効き目をほめたたえてやまなかった。師は言われた。おまえたち、心の病が全快したからといって、それで十分だと思ってはならない。治れば治るほど、ますます参じなさい。悟れば悟るほど、ますます進みなさい。
解説
内観で弟子たちが回復した場面だが、白隠は喜ぶ弟子たちに釘を刺す。病が治ったことで満足するな、治ったならなおさら修行に打ち込め、と。健康法はあくまで道を進むための土台であって、目的ではない。不調から回復した人がそこで立ち止まるのではなく、取り戻した力を本来やりたかったことに向ける。休職から戻った人や、困難を乗り越えたチームに対して、次の一歩を示す言葉としても読める。
この章句が説くこと
回復向上内観修行目的前進
関連する章句
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『夜船閑話』序住菴の諸子此心要を勤めて、はげみ進んで怠らずんば、禅病を治し労疲を救ふのみにあらず。禅門向上の事に到て、年来疑団あらむ人々は、大に手を拍して大笑する底の大歓喜有らむ。何が故ぞ、月高して城影尽く。
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『夜船閑話』序此において真正参玄の上士両三輩を得て、内観と参禅と共に合せ並らべ貯へて、且つ耕し且つ戦ふ者蓋し茲に三十年。年々一員を添へ二肩を增し得て、今既に二百衆に近かし。其中間方来の衲子、労屈疲倦の族、或は心火逆上し正に発狂せんとする底を憐み、密かに此内観の至要を伝授し、立所に快癒せしめ、転々悟れば転々進ましむ。
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『夜船閑話』本文徐々として帰り来て、時々に彼の内観を潜修するに、纔に三年に充たざるに、従前の衆病、薬餌を用ひず、鍼灸を仮らず、任運に除遣す。特り病を治するのみにあらず、従前手脚を挟むこと得ず、歯牙を下すこと得ざる底の難信難透、難解難入底の一着子、根に透り底に徹して、透得過して大歓喜を得るもの、大凡六七囘、其余の小悟、怡悅踏舞を忘るゝもの数をしらず。妙喜の謂ゆる大悟十八度、小悟数を知らずと。初て知る、寔に我を欺かざることを。
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『夜船閑話』序老僧初め参学の時、難治の重病を発して其憂苦、諸子に十倍せり。進退惟谷まる。尋常心にひそかに思惟すらく、生きて此憂愁に沈まんよりは、如かじ早く死して此革囊を捨んにはと。何の幸ぞや、此の内観の秘訣をつたへて全快を得ること、今の諸子の如し。
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『夜船閑話』序是を憐み是を愁て、師不予の色有る者連日、乍ち忍俊不禁にして雲頭を按下し、老婆の臭乳を絞つて是に授るに内観の秘訣を以てす。乃ち云く、若是参禅弁道の上士心火逆上し、身心労疲し、五内調和せざることあらんに、鍼灸薬の三つを以て是を治せんと欲せば、縦ひ華陀扁倉といへども、輙く救ひ得ること能はじ。我に仙人還丹の秘訣あり、儞が輩試に是を修せよ、奇功を見ること、雲霧を披いて皎日を見るが如けん。
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『夜船閑話』序住菴の諸子各々悲泣作礼して云く、吾が師大慈大悲、願くは内観の大略を書せよ。書して留めて後来禅病疲倦吾が輩の如き者を救へ。師即ち頷す。立処に草稿成る。