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和俗童子訓 / 巻之五・教女子法

かゝる人は、婦人の職分を失ひ、後の幸なし。愼むべし。一いにしへ天子より以下、男は外を治め、女は內を治む。王后以下、皆内政を勤め行ひて、婦人の職分あり。今の世のならひ、富貴の家の婦女は、内を治むるつとめうとく、織縫の業におろそかなり。いにしへ我が日の本にては、かけまくもかしこき天照大神自ら神衣を織りたまひ、齋服殿にましましける。其御妹稚日女尊も亦しかり。是日本紀に記せり。もろこしにて、王后みづから玄紞を織り給ふ。公侯の夫人、位貴しといへども、皆自らきぬをおれり。今の士大夫の妻、安逸にほこりて女功を勤めざるは、古法にはあらず。

新字:かゝる人は、婦人の職分を失ひ、後の幸なし。慎むべし。一いにしへ天子より以下、男は外を治め、女は内を治む。王后以下、皆内政を勤め行ひて、婦人の職分あり。今の世のならひ、富貴の家の婦女は、内を治むるつとめうとく、織縫の業におろそかなり。いにしへ我が日の本にては、かけまくもかしこき天照大神自ら神衣を織りたまひ、斎服殿にましましける。其御妹稚日女尊も亦しかり。是日本紀に記せり。もろこしにて、王后みづから玄紞を織り給ふ。公侯の夫人、位貴しといへども、皆自らきぬをおれり。今の士大夫の妻、安逸にほこりて女功を勤めざるは、古法にはあらず。

書き下し

かかる人は、婦人の職分を失ひ、後の幸なし。慎むべし。一いにしへ天子より以下、男は外を治め、女は内を治む。王后以下、皆内政を勤め行ひて、婦人の職分あり。今の世のならひ、富貴の家の婦女は、内を治むるつとめうとく、織縫の業におろそかなり。いにしへ我が日の本にては、かけまくもかしこき天照大神自ら神衣を織りたまひ、斎服殿にましましける。其御妹稚日女尊も亦しかり。是日本紀に記せり。もろこしにて、王后みづから玄紞を織り給ふ。公侯の夫人、位貴しといへども、皆自らきぬをおれり。今の士大夫の妻、安逸にほこりて女功を勤めざるは、古法にはあらず。

現代語訳

このような人は、婦人の職分を失い、後の幸いもありません。慎みなさい。昔、天子から下まで、男は外を治め、女は内を治めました。王后以下、皆内の政を勤め行って、婦人の職分がありました。今の世の習わしでは、富貴の家の婦女は、内を治める勤めにうとく、機織りや縫い物の仕事をおろそかにしています。昔、わが日本では、口にするのも畏れ多い天照大神が、自ら神の衣を織られ、斎服殿にいらっしゃいました。その妹の稚日女尊もまたそうでした。これは日本書紀に記されています。中国では、王后が自ら冠の紐(玄紞)を織られました。公侯の夫人も、位は貴いけれども、皆自ら絹を織りました。今の士大夫の妻が、安逸にほこって女性の仕事を勤めないのは、古法ではありません。

解説

男は外、女は内を治めるという古代の分担を示し、身分の高い女性も自ら機を織ったことを例に挙げた条です。天照大神が斎服殿で神衣を織り、稚日女尊も同様であったことは日本書紀の神代の巻に見えます。王后が自ら玄紞を織ったという話は、国語魯語の敬姜の言葉に見えます。益軒は、富貴の家の女性が仕事を人任せにする当時の風潮を批判しています。内外の分担という前提は今とは異なりますが、身分が高くても自らの務めを果たすことの尊さを示す故事として読めます。

この章句が説くこと

職分日本書紀勤勉家女子教育

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