和俗童子訓 / 巻之五・教女子法
一女は人につかふるものなれば、父の家富貴なりとても、夫の家に行きては、其親の家に在りし時より、身をひきくして、舅姑にへりくだり、愼み仕へて、朝夕のつとめ怠るべからず。舅姑のために衣を縫ひ、食を調へ、我が家にては、夫に仕へて高ぶらず、自ら衣をたゝみ、席をはき、食を調へ、うみ、つむぎ、縫物し、子を育て、けがれを洗ひ、婢多くとも、萬の事に自ら辛勞をこらへて勤むる、是婦人の職分なれば、我が位と身に應ぜぬほど、引きさがり勤むべし。斯のごとくすれば、しうと夫の心に叶ひ、家人の心を得て、能く家を保つ。又我が身に高ぶりて人をさし使ひ、勤むべき事に怠りて、身を安樂に置くは、しうとに憎まれ、下人に謗られて、人の心を失ひ、其家を能く治むる事なし。
新字:一女は人につかふるものなれば、父の家富貴なりとても、夫の家に行きては、其親の家に在りし時より、身をひきくして、舅姑にへりくだり、慎み仕へて、朝夕のつとめ怠るべからず。舅姑のために衣を縫ひ、食を調へ、我が家にては、夫に仕へて高ぶらず、自ら衣をたゝみ、席をはき、食を調へ、うみ、つむぎ、縫物し、子を育て、けがれを洗ひ、婢多くとも、万の事に自ら辛労をこらへて勤むる、是婦人の職分なれば、我が位と身に応ぜぬほど、引きさがり勤むべし。斯のごとくすれば、しうと夫の心に叶ひ、家人の心を得て、能く家を保つ。又我が身に高ぶりて人をさし使ひ、勤むべき事に怠りて、身を安楽に置くは、しうとに憎まれ、下人に謗られて、人の心を失ひ、其家を能く治むる事なし。
書き下し
一女は人につかふるものなれば、父の家富貴なりとても、夫の家に行きては、其親の家に在りし時より、身をひきくして、舅姑にへりくだり、慎み仕へて、朝夕のつとめ怠るべからず。舅姑のために衣を縫ひ、食を調へ、我が家にては、夫に仕へて高ぶらず、自ら衣をたたみ、席をはき、食を調へ、うみ、つむぎ、縫物し、子を育て、けがれを洗ひ、婢多くとも、万の事に自ら辛労をこらへて勤むる、是婦人の職分なれば、我が位と身に応ぜぬほど、引きさがり勤むべし。斯のごとくすれば、しうと夫の心に叶ひ、家人の心を得て、能く家を保つ。又我が身に高ぶりて人をさし使ひ、勤むべき事に怠りて、身を安楽に置くは、しうとに憎まれ、下人に謗られて、人の心を失ひ、其家を能く治むる事なし。
現代語訳
女性は人に仕えるものですから、父の家が富貴であっても、夫の家に行ったら、親の家にいた時よりも身を低くして、舅・姑にへりくだり、慎んで仕えて、朝夕の勤めを怠ってはなりません。舅・姑のために衣服を縫い、食事を整え、自分の家では夫に仕えて高ぶらず、自分で衣服をたたみ、座敷を掃き、食事を整え、糸を紡ぎ、縫い物をし、子を育て、汚れ物を洗い、下女が多くても、何事も自分で苦労をこらえて勤めること、これが婦人の職分ですから、自分の位や身分にふさわしくないほど、へりくだって勤めなさい。そうすれば、舅や夫の心にかない、家の者の心も得て、よく家を保てます。また、自分の身に高ぶって人を指図して使い、勤めるべきことを怠って、身を安楽に置くと、舅・姑に憎まれ、下人に謗られて、人の心を失い、その家をよく治めることはできません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『十善法語』巻第五・不綺語戒執政大臣ノ楽ハ。上一人ヲ輔ケテ自ラ専ニセヌ。中百官ヲ率テ心常ニ謙遜ス。下万民ヲ保ンシテ共ニ太平ヲ楽ム。此位ハ人臣ノ極リ。此威勢ハ大君ニ等シ。一タヒ回顧スレハ万国色ヲ変ス。一タヒ言ヘハ率土奉行スル。徳海内ニ加ツテ自ラ其功ニ居ラス。恩禽獣ニ及ンテ其能ニホコラス。余ハ大君ノ楽ニ同スルシヤ。其楽糸竹管絃ノ及フ所ナラス。マシテ狂言綺語酒宴遊興ニ比スヘキコトテハナキシヤ。総シテ上ニ命ヲ受ル所アルヲ一ノ楽トス。天命ニ順スルシヤ。下ニ恵ム民有ヲ一ノ楽トス。人道行ハルルシヤ。天命ニ順スル故家門永ク其福ヲ受ク。人道ヲ行フ故子孫常ニ賢才徳者ヲ得ト云コトシヤ。
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『五常訓』巻之四・礼一礼は謙遜をたつとぶ。謙はへりくだる也。ほこると裏表なり。ほこるは我が才力権位功名にほこるの類なり。謙は自満せざるを云ふ。我が身に才徳権位功業あれどもほこらず。是天下の美徳なり。遜はゆづるなり。善事を君父にゆづり、人にゆづりて、自ら居らざるを云ふ。
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『呻吟語』内篇・修身・謙も禮に中らざれば損する所亦た多し或るひと問ふ、「傲は凶德と為らば、則ち謙は吉德なるか」と。曰く、「謙は真に是れ吉なり。然れども謙も禮に中らざれば、損する所亦た多し」と。上に在る者非禮の謙を為さば、則ち名份を亂し紀網を紊し、久しければ法令行はれず。下に在る者非禮の謙を為さば、則ち賤辱を取り氣節を喪ひ、久しければ廉恥地を掃ふ。君子の人に接するは未だ嘗て謹飭ならずんばあらず、身を持するは未だ嘗て正大ならずんばあらず。孔子曰く、「恭にして禮無ければ則ち勞す」と。又た曰く、「巧言令色足恭は、某も亦た之を恥づ」と。
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『夜船閑話』本文少焉、幽眼を開いて熟々視て、徐々として告げて曰く、我は是山中半死の陳人、櫨栗を拾ひ食ひ、麋鹿に伴つて睡る。此外更に何をか知らんや。自ら愧づ、遠く上人の来望を労することを、予即ち転々咨叩して休まず。
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『呻吟語』内篇・修身・損ずるは甚の體ぞ今人苦だ謙るを肯んぜず。只だ架子を拿へ得て定まり、以て體を存すと為す。夫子子張に政に從ふを告ぐるに、小大と無く眾寡と無く敢へて慢る無きを以て驕らずと為す。而して周公相と為りて、吐握して白屋に下ること甚だし。父師有道の君、知らず甚の體をか損ぜしや。若し名分の在る所ならば、自ら是れ貶損し得ず。
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『呻吟語』内篇・存心・自家の好き處は幾分を掩藏す自家の好き處は幾分を掩藏す、這れ是れ涵蓄して以て深きを養ふなり。別人の好からざる處は幾分を掩藏せんことを要す、這れ是れ渾厚にして以て大なるを養ふなり。
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