尉繚子 / 兵令下
士卒不用命者,未之聞也。
書き下し
士卒の命を用ひざる者は、未だ之を聞かざるなり。
現代語訳
(そのように統率された軍で)兵士が命令に従わないなどということは、いまだかつて聞いたことがない。
解説
兵令下篇の最後の句で、前段の「故に曰く」を受け、そうした統率のもとで士卒が命に従わないことは聞いたことがないと結ぶ。尉繚子全篇の締めくくりにあたる言葉であり、将が威を立て、号令を明らかにし、賞罰を必ず行い、什伍を連ねて互いに救わせれば、兵は必ず命を用いるという確信が込められている。天官時日よりも人事を、個人の勇よりも制度を重んじる本書の姿勢が、最後まで貫かれている。兵が命に従わないのは兵の罪ではなく、統率の仕組みが整っていないからだという含みも読み取れる。現代の組織に置き換えれば、メンバーが指示に従わないのは本人の資質より、指揮する側の威と信と仕組みの不足に原因があると考えるべきだという教えになる。
関連する章句
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尉繚子・兵令下将能く威を立て、卒能く節制し、号令明信にして、攻守皆得るは、是れ兵の三勝なり。臣聞く、古の善く兵を用ふる者は、能く士卒の半ばを殺し、其の次は其の十の三を殺し、其の次は其の十の一を殺す。能く其の半ばを殺す者は、威海内に加はる。十の三を殺す者は、力諸侯に加はる。十の一を殺す者は、令士卒に行はる。故に曰く、
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尉繚子・兵教上民をして国門の限を背にし、死生の分を決せしめ、之に死して疑はざるを教ふる者は、以有るなり。守る者をして必ず固く、戦ふ者をして必ず闘ひ、奸謀作らず、姦民語らず、令行はれて変無く、兵行はれて猜無く、軽き者は霆の若く、敵に奮ふこと驚くが若くせしむ。功を挙げ徳を別つこと、明らかなること白黒の如く、
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尉繚子・兵教下今戦国相攻め、大いに有徳を伐つ。伍よりして両、両よりして師、其の令を一にせず、率ね民心をして定まらざらしめ、徒らに驕侈を尚び、謀患辨訟し、吏其の事を究め、累ねて且に敗れんとす。日暮れ路遠く、還るに剉気有り、師老い将貪り、争掠して敗れ易し。凡そ将軽く、塁卑く、衆動けば、攻むべきなり。将重く、塁高く、衆懼るれば、囲むべきなり。凡そ囲むには必ず其の小利を開き、漸く夷弱ならしむれば、則ち節吝して食はざる者有り。衆夜撃つ者は、驚くなり。衆事を避くる者は、離るるなり。人の救を待ち、戦を期して蹙まるは、皆心失はれて気傷るるなり。気を傷れば軍を敗り、曲謀は国を敗る。
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尉繚子・兵教上民をして上の令に従わしむること、四肢の心に応ずるがごとし。
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尉繚子・戰威賢を舉げ能に任すれば、時日せずして事利あり。法を明らかにし令を審らかにすれば、卜筮せずして吉を獲。功を貴び勞を養えば、禱祠せずして福を得。
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尉繚子・兵談夫れ心狂ひ、耳聾し、目盲ひ、三悖を以て人を率ゐる者は、難し。兵の及ぶ所、羊腸も亦勝ち、鋸歯も亦勝ち、山に縁(よ)るも亦勝ち、谷に入るも亦勝ち、方なるも亦勝ち、円なるも亦勝つ。重き者は山の如く、林の如く、江の如く、河の如く、軽き者は炮(あぶ)るが如く、燔(や)くが如く、垣の之を圧するが如く、雲の之を覆ふが如し。人をして聚まりて以て散ずるを得ず、散じて以て聚まるを得ず、左は以て右するを得ず、右は以て左するを得ざらしむ。兵は総木の如く、弩は羊角の如く、人人騰陵張胆せざるは無く、疑慮を絶ちて、堂堂として決して去る。
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