尉繚子 / 兵談
量土地肥磽而立邑,建城稱地,以城稱人,以人稱粟。三相稱,則内可以固守,外可以戰勝。戰勝於外,備主於内,勝備相應,猶合符節,無異故也。治兵者,若秘于地,若邃于天,生于無,故開之。大不窕,小不恢,明乎禁舍開塞,民流者親之。地不任者任之。夫土廣而任則國富,民衆而制則國治。富治者,民不發軔,甲不出暴,而威制天下。故曰:
新字:量土地肥磽而立邑,建城称地,以城称人,以人称粟。三相称,則内可以固守,外可以戦勝。戦勝於外,備主於内,勝備相応,猶合符節,無異故也。治兵者,若秘于地,若邃于天,生于無,故開之。大不窕,小不恢,明乎禁舎開塞,民流者親之。地不任者任之。夫土広而任則国富,民衆而制則国治。富治者,民不発軔,甲不出暴,而威制天下。故曰:
書き下し
土地の肥磽(ひかう)を量りて邑を立て、城を建つるに地に称(かな)へ、城を以て人に称へ、人を以て粟に称ふ。三つ相称へば、則ち内は以て固く守るべく、外は以て戦ひ勝つべし。外に戦ひ勝つは、備へ内に主たればなり。勝と備と相応ずること、猶ほ符節を合するがごとく、異なる故無きなり。兵を治むる者は、地に秘するが若く、天に邃(ふか)きが若く、無より生ず、故に之を開く。大なるも窕(ちょう)ならず、小なるも恢ならず。禁舎開塞に明らかなれば、民の流るる者も之に親しむ。地の任ぜられざる者は之を任ず。夫れ土広くして任ずれば則ち国富み、民衆くして制すれば則ち国治まる。富み治まる者は、民は軔を発せず、甲は出でて暴(さら)さずして、威は天下を制す。故に曰く、
現代語訳
土地が肥えているか痩せているかを測って村を立て、城を築くにはその土地に見合わせ、城の大きさは住む人の数に見合わせ、人の数は穀物の量に見合わせる。この三つが釣り合えば、内には固く守ることができ、外には戦って勝つことができる。外で戦って勝てるのは、備えが内で主となっているからである。勝利と備えとが呼応することは、割符を合わせるようにぴたりと一致し、そこに別の理由はない。兵を治める者は、地の底に隠れるように深く、天の奥のように測りがたく、形のないところから生まれ出る。だからこそ道を開くことができる。大きく用いても隙間ができず、小さく用いても余りが出ない。禁じること・許すこと・開くこと・塞ぐことに明らかであれば、流浪している民も親しんで寄ってくる。耕されていない土地には人を充てて耕させる。そもそも土地が広くそれが使われていれば国は富み、民が多くそれが統制されていれば国は治まる。富み治まった国は、民が車を動かすことなく、鎧を野にさらすこともなくして、その威光で天下を制する。だから言うのである、
解説
関連する章句
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尉繚子・兵教下人をして私語するを得ること無からしむ。諸そ罰して罰せざるを請ふ者は、死す。諸そ賞して賞せざるを請ふ者は、死す」と。国を伐つには必ず其の変に因る。之に財を示して、以て其の窮を観る。之に弊を示して、以て其の病を観る。上乖き下離る、此の若きの類は、是れ伐つの因なり。凡そ師を興すには、必ず内外の権を審らかにして、以て其の去を計る。兵に備闕有り、糧食に余・不足有り、出入する所の路を校べ、然る後に師を興して乱を伐てば、必ず能く之に入る。地大にして城小なる者は、必ず先づ其の地を収む。城大にして地窄き者は、必ず先づ其の城を攻む。地広くして人寡き者は、則ち其の阨を絶つ。地窄くして人衆き者は、則ち大堙を築きて以て之に臨む。
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尉繚子・兵談兵は朝廷に勝つ。甲を暴わさずして勝つ者は主の勝ちなり、陳して勝つ者は將の勝ちなり。
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尉繚子・攻權険を分かつ者は戦心無く、戦ひを挑む者は全気無く、闘戦する者は勝兵無し。凡そ義を挟みて戦ふ者は、我より起こすを貴ぶ。私を争ひ怨みを結ぶは、已むを得ざるに応ず。怨み結びて起こると雖も、之を待つには後るるを貴ぶ。故に争ひは必ず当に之を待つべく、息(や)むも必ず当に之に備ふべし。兵に朝廷に勝つ有り、原野に勝つ有り、市井に勝つ有り。闘へば則ち得、服すれば則ち失ふ、幸ひにして以て敗れざるは、此れ彼の驚懼するを意(おも)はずして曲げて之に勝つなり。曲勝とは、全きに非ざるを言ふなり。全勝に非ざる者は、権名無し。故に明主の戦攻の日は、鼓を合はせ角を合はせ、節するに兵刃を以てし、勝つを求めずして勝つなり。兵に備へを去り威を徹して勝つ者有り、其の法有るを以ての故なり。器用の蚤(はや)く定まる有るや、其の敵に応ずるや周く、其の総率するや極まる。故に五人にして伍、十人にして什、百人にして卒、千人にして率、万人にして将、已に周く已に極まる。其の朝に死すれば則ち朝に代はり、暮に死すれば則ち暮に代はる。敵を権り将を審らかにして、而る後に兵を挙ぐ。故に凡そ兵を集むるに、千里の者は旬日、百里の者は一日にして、必ず敵境に集まる。卒聚まり将至れば、深く其の地に入り、其の道を錯絶し、其の大城大邑に棲み、之をして城に登り危に逼(せま)らしめ、男女数重、各々地形に逼りて、要塞を攻む。一城邑に拠りて、数道絶ゆれば、従ひて之を攻む。敵の将帥信ずる能はず、吏卒和する能はず、刑に従はざる所有る者は、則ち我之を敗る。敵の救ひ未だ至らずして、一城已に降る。津梁未だ発せず、要塞未だ修めず、城険未だ設けず、渠答(きょたふ)未だ張らざれば、則ち城有りと雖も守り無し。遠堡未だ入らず、戍客未だ帰らざれば、則ち人有りと雖も人無し。六畜未だ聚めず、五穀未だ収めず、財用斂むる無ければ、則ち資有りと雖も資無し。夫れ城邑空虚にして資尽くる者は、我其の虚に因りて之を攻む。法に曰く、「独り出で独り入り、敵人刃を接せずして之を致す」と。此の謂ひなり。
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尉繚子・制談独り出で独り入る者は、王覇の兵なり。十万の衆を提(ひき)ゐて、天下当たる莫き者有り、誰ぞ。曰く、「桓公なり。」七万の衆を提ゐて、天下当たる莫き者有り、誰ぞ。曰く、「呉起なり。」三万の衆を提ゐて、天下当たる莫き者有り、誰ぞ。曰く、「武子なり。」今天下の諸国の士の率ゐる所、二十万の衆に及ばざるは無し、然れども功名を済(な)す能はざる者は、禁舎開塞に明らかならざればなり。其の制を明らかにし、一人之に勝てば、則ち十人も亦以て之に勝つなり。十人之に勝てば、則ち百千万人も亦以て之に勝つなり。故に曰く、「吾が器用を便にし、吾が武勇を養ひ、之を発すること鳥の撃つが如く、千仞の谿に赴くが如し」と。今国の患を被る者は、重幣を以て聘を出だし、愛子を以て質を出だし、地界を以て割を出だし、天下の助けを得るも、卒は名づけて十万と為すも、其の実は数万に過ぎざるのみ。其の兵の来たる者、其の将に謂ひて曰はざるは無し、「人の下と為る無かれ、先づ戦へ」と。其の実は得て戦ふべからざるなり。吾が境内の民を量るに、伍無ければ能く正す莫し。十万の衆を経制して、王必ず能く之をして吾が衣を衣(き)、吾が食を食はしむ。戦ひて勝たず、守りて固からざる者は、吾が民の罪に非ず、内より自ら致すなり。天下の諸国の我を助けて戦ふは、猶ほ良驥騄駬(りょくじ)の駃(はや)きに、彼の駑馬の鬐(たてがみ)興して角逐するがごとし、何ぞ能く吾が気を紹(つ)がんや。吾は天下の用を用ひて用と為し、吾は天下の制を制して制と為し、吾が号令を修め、吾が刑賞を明らかにし、天下をして農に非ざれば食を得る所無く、戦ひに非ざれば爵を得る所無からしめば、民をして臂を争ひて農・戦に出でしめて、天下に敵無からん。故に曰く、「号を発し令を出だし、信は国内に行はる」と。民の言に以て敵に勝つべき者有れば、其の空言を許す毋かれ、必ず其の能く戦ふを試みよ。人の地を視て之を有し、人の民を分かちて之を畜ふは、必ず能く内に其の賢者を有すればなり。
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尉繚子・兵令下諸そ大軍を去りて前禦の備へを為す者は、辺県列侯、各相去ること三五里。大軍の前禦の備へを為すを聞けば、戦へば則ち皆行くを禁ず、内を安んずる所以なり。内卒出でて戍れば、将吏をして旗鼓戈甲を授けしむ。発する日、将吏に後れ及び県の封界を出づる者は、後戍の法を以て坐す。兵辺を戍ること一歳、遂に亡げて代を候たざる者は、法亡軍に比す。父母妻子之を知れば、与に罪を同じくす。知らざれば、之を赦す。卒将吏に後れて大将の所に至ること一日なれば、父母妻子尽く罪を同じくす。卒逃げて家に帰ること一日、父母妻子捕執せず及び言はざれば、亦罪を同じくす。諸そ戦ひて其の将吏を亡ふ者、及び将吏卒を棄てて独り北ぐる者は、尽く之を斬る。前吏其の卒を棄てて北ぐるに、後吏能く之を斬りて其の卒を奪ふ者は、賞す。軍功無き者は、戍ること三歳。三軍大いに戦ひ、若し大将死して、従吏五百人以上敵に死する能はざれば、斬る。大将の左右近卒の陳中に在る者は、皆斬る。余の士卒軍功有る者は、一級を奪ふ。軍功無き者は、戍ること三歳。戦ひて伍人を亡ひ、及び伍人戦死して其の屍を得ざれば、同伍尽く其の功を奪ふ。其の屍を得れば、罪皆赦す。軍の利害は、国の名実に在り。今名は官に在りて、実は家に在り、官は其の実を得ず、家は其の名を得ず。卒を聚めて軍と為すも、空名有りて実無く、外は以て敵を禦ぐに足らず、内は以て国を守るに足らず、此れ軍の給せざる所以、将の威を奪はるる所以なり。臣以謂へらく、卒逃げ帰る者は、同舎の伍人及び吏罰して糧を入れて饒と為し、名づけて軍実と為す、是れ一軍の名有りて、二実の出有り、国内空虚にして、自ら民の歳を竭くす、曷ぞ以て奔北の禍を免れんや。今法を以て逃帰を止め、亡軍を禁ずるは、是れ兵の一勝なり。什伍相連なり、戦闘に及べば則ち卒吏相救ふは、是れ兵の二勝なり。
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尉繚子・戰威奪ふとは、心の機なり。令とは、衆心を一にするなり。衆審らかならざれば、則ち数々変ず。数々変ずれば、則ち令出づと雖も、衆信ぜず。故に之に令するの法は、小過は更むる無く、小疑は中(あ)つる無し。故に上に疑令無ければ、則ち衆は二聴せず。動くに疑事無ければ、則ち衆は二志せず。未だ其の心を信ぜずして、能く其の力を得る者有らざるなり。未だ其の力を得ずして、能く其の死戦を致す者有らざるなり。故に国に必ず礼・信・親・愛の義有れば、則ち饑を以て飽に易(か)ふべし。国に必ず孝・慈・廉・恥の俗有れば、則ち死を以て生に易ふべし。古の民を率ゐるは、必ず礼信を先にして爵禄を後にし、廉恥を先にして刑罰を後にし、親愛を先にして其の身を律す。故に戦ふ者は、心は身を率ゐて以て衆士を励ますに本づき、心の四肢を使ふが如し。志励まざれば、則ち士は節に死せず。士節に死せざれば、則ち衆戦はず。士を励ますの道は、民の生、厚くせざるべからざるなり。爵列の等、死喪の親、民の営む所、顕らかにせざるべからざるなり。必ずや民の生ずる所に因りて之を制し、民の営む所に因りて之を顕らかにし、田禄の実、飲食の親、郷里相勧め、死喪相救ひ、兵役相従ふ、此れ民の励む所なり。什伍をして親戚の如く、卒伯をして朋友の如くならしめ、止まれば堵牆の如く、動けば風雨の如く、車は轍を結ばず、士は踵を旋らさず、此れ本戦の道なり。地は民を養ふ所以なり、城は地を守る所以なり、戦ひは城を守る所以なり。故に耕に務むる者は、民饑ゑず。守りに務むる者は、地危ふからず。戦ひに務むる者は、城囲まれず。三者は、先王の本務なり。本務なる者は、兵最も急なり。故に先王は兵に専らにすること、五つ有り。委積多からざれば、則ち士行かず。賞禄厚からざれば、則ち民勧まず。武士選ばざれば、則ち衆強からず。器用備はらざれば、則ち力壮ならず。刑罰中らざれば、則ち衆畏れず。此の五者に務むれば、静かなれば能く其の固むる所を守り、動けば能く其の欲する所を成す。夫れ居を以て出づるを攻むるには、則ち居は重きを欲し、陳は堅きを欲し、発するは畢(ことごと)くなるを欲し、闘ふは斉しきを欲す。王国は民を富まし、覇国は士を富まし、僅かに存するの国は大夫を富まし、亡国は倉府を富ます。所謂上満ちて下漏れ、患ひ救ふ所無し。故に曰く、
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