うひ山ぶみ / 第三十五段
又いづれの書をよむとても、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと讀ては、又さきによみたる書へ立かへりつゝ、幾遍もよむうちには、始メに聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也、
新字:又いづれの書をよむとても、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと読ては、又さきによみたる書へ立かへりつゝ、幾遍もよむうちには、始メに聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也、
書き下し
又いづれの書をよむとても、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと読ては、又さきによみたる書へ立かへりつゝ、幾遍もよむうちには、始メに聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也、
現代語訳
またどの書物を読むにしても、初心のうちは、端から文意を解こうとしてはならない。まずおおよそさらさらと見て、他の書に移り、あれこれと読んでは、また先に読んだ書に立ち返りながら、何度も読むうちには、初めには分からなかったことも、だんだんと分かるようになっていくものである。
解説
具体的な読書法として、最もよく知られた一段である。分からないところで止まるな。まず大まかに通し、別の本に移り、また戻る。これを繰り返すうちに、最初に分からなかったことが分かるようになる、と。奥の注はさらに踏み込む。難所を先に知ろうとするのは「いといとわろし」であり、よく分かるところに心をつけて深く味わえ、と。分からない箇所を潰していく読み方ではなく、分かる箇所を足場にして全体の理解を上げていく読み方である。難解な分野に入るときの実践的な助言として、今もそのまま通用する。
この章句が説くこと
読書法反復通読難所初学者
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