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都鄙問答 / 卷之四・或人天地開闢ノ說ヲ譏ノ段

況ヤ性理ニ明ナル者、文學ニ達スルナラバ、聖學ノ興ルコト速ナルベシ、孟子所謂七八月ノ間、旱苗槁、天油然雲作、沛然雨下、則苗浡然興之矣、カクノ如ク興リ起テ、聖學天下遍カラン、此故ニ博學豪傑ノ士、性理、明ナル者アランコトヲ幾フ、汝モ一理ヲ明シ得ナラバ、其時ニコソ、神聖生其中國常立尊ト號トノ玉フコト知覺シ、天ノ與ル樂ヲ得テ、實ノ道ニ入ラルベシ、

新字:況ヤ性理ニ明ナル者、文学ニ達スルナラバ、聖学ノ興ルコト速ナルベシ、孟子所謂七八月ノ間、旱苗槁、天油然雲作、沛然雨下、則苗浡然興之矣、カクノ如ク興リ起テ、聖学天下遍カラン、此故ニ博学豪傑ノ士、性理、明ナル者アランコトヲ幾フ、汝モ一理ヲ明シ得ナラバ、其時ニコソ、神聖生其中国常立尊ト号トノ玉フコト知覚シ、天ノ与ル楽ヲ得テ、実ノ道ニ入ラルベシ、

書き下し

況んや性理に明らかなる者、文学に達するならば、聖学の興ること速かなるべし。孟子の所謂、七八月の間、旱すれば苗槁る。天油然として雲を作し、沛然として雨を下せば、則ち苗浡然として之に興る。かくの如く興り起りて、聖学天下に遍からん。此の故に博学豪傑の士、性理に明らかなる者あらんことを幾ふ。汝も一理を明し得ならば、其の時にこそ、神聖其の中に生れ、国常立尊と号すとの玉ふこと知覚し、天の与ふる楽を得て、実の道に入らるべし。

現代語訳

まして性理に明らかな者が学問にも通じるなら、聖人の学はたちまち興るでしょう。孟子の言う、七、八月の間に日照りが続けば苗は枯れるが、天がむくむくと雲を起こし、ざあざあと雨を降らせれば、苗は勢いよく起き上がる、というように、聖学は興り起こって天下に行き渡るでしょう。だからこそ、博学で豪傑の士の中に、性理に明らかな者が現れることを願うのです。あなたも一つの理を明らかにし得たなら、その時こそ『神がその中に生まれ、国常立尊と号す』と言われたことを悟り、天が与える楽しみを得て、真実の道に入ることができるでしょう。

解説

『都鄙問答』はこの一節で結ばれます。孟子梁恵王上篇の、日照りで枯れかけた苗が雨を得て勢いよく起き上がるたとえを借りて、性理を悟った者が学問にも通じれば、聖学は一気に広まると述べます。梅岩は学問を否定したのではなく、心を知ることを本とし、博学をその上に置けと言うのです。最後の「天の与ふる楽」は、巻之一冒頭の「天ノ与ル楽ハ、実ニ面白キアリサマ哉」と呼応し、全四巻が同じ言葉で閉じられる構成になっています。
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