都鄙問答 / 卷之四・醫ノ志ヲ問ノ段
或人問曰、吾忰ノ內、一人ハ醫者ニ致度候、渡世ノ爲ニハ、如何ナルモノニテ有ベキヤ、答、吾醫之道ハ學ザレバ、委カラズトイヘドモ、暫ク志ス所ヲ以テ告ン、先第一、醫學ニ心ヲ盡スベキコトナリ、醫書ノ意味得心ナクシテ、人ノ命ヲアヅカルコトハ恐ルベシ、イカントナレバ、我一命ノ惜コトヲ顧、他人ニ推及ス、カヽル時ハ病人ヲ預リテ、一時モ心ユルヤカナルベカラズ、譬バ我身ニ頭痛シ腹痛時ハ、少ノ間ニテモ、堪忍ナルマジ、其堪忍ナラヌコトヲ知ラバ、人ノ病ヲ見テハ、我病ノ如ク思ヒ、心ヲ盡シ療治セバ、一夜ニテモ、ユルヤカニ寐ルコトハナルマジ、人ノ命ヲ惜、藥ヲ施シ、施スヲ以テ心トシ、病氣快然ヲ以テ樂トシ、藥禮ノ事ヲ思ハズ、
新字:或人問曰、吾忰ノ内、一人ハ医者ニ致度候、渡世ノ為ニハ、如何ナルモノニテ有ベキヤ、答、吾医之道ハ学ザレバ、委カラズトイヘドモ、暫ク志ス所ヲ以テ告ン、先第一、医学ニ心ヲ尽スベキコトナリ、医書ノ意味得心ナクシテ、人ノ命ヲアヅカルコトハ恐ルベシ、イカントナレバ、我一命ノ惜コトヲ顧、他人ニ推及ス、カヽル時ハ病人ヲ預リテ、一時モ心ユルヤカナルベカラズ、譬バ我身ニ頭痛シ腹痛時ハ、少ノ間ニテモ、堪忍ナルマジ、其堪忍ナラヌコトヲ知ラバ、人ノ病ヲ見テハ、我病ノ如ク思ヒ、心ヲ尽シ療治セバ、一夜ニテモ、ユルヤカニ寐ルコトハナルマジ、人ノ命ヲ惜、薬ヲ施シ、施スヲ以テ心トシ、病気快然ヲ以テ楽トシ、薬礼ノ事ヲ思ハズ、
書き下し
或人問ひて曰く、吾が忰の内、一人は医者に致したく候。渡世の為には、如何なるものにて有るべきや。答、吾医の道は学ばざれば、委しからずといへども、暫く志す所を以て告げん。先づ第一、医学に心を尽すべきことなり。医書の意味得心なくして、人の命をあづかることは恐るべし。いかんとなれば、我一命の惜しきことを顧み、他人に推し及ぼす。かかる時は病人を預りて、一時も心ゆるやかなるべからず。譬へば我が身に頭痛し腹痛む時は、少しの間にても、堪忍なるまじ。其の堪忍ならぬことを知らば、人の病を見ては、我が病の如く思ひ、心を尽し療治せば、一夜にても、ゆるやかに寐ることはなるまじ。人の命を惜しみ、薬を施し、施すを以て心とし、病気快然を以て楽とし、薬礼の事を思はず、
現代語訳
ある人が尋ねました。「私の息子のうち一人を医者にしたいと思っております。暮らしを立てるためには、どういう心得であればよいでしょうか」。梅岩は答えます。「私は医学を学んでいないので詳しくはありませんが、志すべきところを申しましょう。まず第一に、医学に心を尽くすことです。医書の意味を得心しないまま人の命を預かるのは恐ろしいことです。なぜなら、自分の命が惜しいことを顧みれば、それを他人にも推し及ぼすからです。そうなれば、病人を預かって一時も気をゆるめてはいられません。たとえば自分が頭痛や腹痛のときは、少しの間でも我慢できないでしょう。その我慢できなさを知っていれば、人の病を自分の病のように思い、心を尽くして治療するので、一晩でもゆっくり寝てなどいられないはずです。人の命を惜しんで薬を施し、施すことを自分の心とし、病気が治ることを楽しみとし、謝礼のことは考えずに、
解説
この章句が説くこと
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論語・雍也篇宰我問いて曰く、「仁者は之に告げて『井に仁有り』と曰うと雖も、其れ之に従わんか。」子曰く、「何為れぞ其れ然らんや。君子は逝かしむ可きも、陥る可からず。欺く可きも、罔う可からず。」
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論語・八佾篇子曰く、人にして仁ならずんば、礼を如(いかん)せん;人にして仁ならずんば、楽を如せん。
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論語・憲問篇「克・伐・怨・欲、行われずんば、以て仁と為す可きか。」子曰く、「以て難しと為す可し。仁は則ち吾知らざるなり。」
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論語・里仁篇子曰わく、不仁者は久しく約に処るべからず、長く楽に処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす。
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論語・里仁篇子曰わく、ただ仁者のみよく人を好み、よく人を悪む。
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