都鄙問答 / 卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段
仕用ニ替ルコト無キユヘナリト云、天下ヲ治ルハ、大佛殿ヲ建ルガ如シ、小家ヲ治ルハ、雛形ノ小堂ヲ建ルガ如シ、家一軒ニハ、君臣有リ、父子有リ、夫婦有リ、兄弟有リ、朋友ノ交リ有リ、人倫ノ道ナクバ、小家ト云ヘドモ、如何シテ治ルベキ、小家ヲ治ルモ仁、國天下ヲ治ルモ仁、仁ニ二品ノ替アランヤ、商人ノ仁愛モ間ニ合バコソ、先年飢饉ノ救ヒ米ヲ出シタル者ハ、悉ク御褒美ヲ下シ玉ヘリ、飢人ヲ救フテ人ヲ不殺ハ、人ノ道ナリ、
新字:仕用ニ替ルコト無キユヘナリト云、天下ヲ治ルハ、大仏殿ヲ建ルガ如シ、小家ヲ治ルハ、雛形ノ小堂ヲ建ルガ如シ、家一軒ニハ、君臣有リ、父子有リ、夫婦有リ、兄弟有リ、朋友ノ交リ有リ、人倫ノ道ナクバ、小家ト云ヘドモ、如何シテ治ルベキ、小家ヲ治ルモ仁、国天下ヲ治ルモ仁、仁ニ二品ノ替アランヤ、商人ノ仁愛モ間ニ合バコソ、先年飢饉ノ救ヒ米ヲ出シタル者ハ、悉ク御褒美ヲ下シ玉ヘリ、飢人ヲ救フテ人ヲ不殺ハ、人ノ道ナリ、
書き下し
仕様に替ることなきゆゑなりと云ふ。天下を治むるは、大仏殿を建つるが如し。小家を治むるは、雛形の小堂を建つるが如し。家一軒には、君臣有り、父子有り、夫婦有り、兄弟有り、朋友の交はり有り。人倫の道なくば、小家と云へども、如何して治まるべき。小家を治むるも仁、国天下を治むるも仁、仁に二品の替りあらんや。商人の仁愛も間に合へばこそ、先年飢饉の救ひ米を出したる者は、悉く御褒美を下したまへり。飢人を救うて人を殺さざるは、人の道なり。
現代語訳
「仕様に違いはないからです』と言いました。天下を治めるのは大仏殿を建てるようなもの、小さな家を治めるのは雛形の小堂を建てるようなものです。一軒の家にも、主従があり、親子があり、夫婦があり、兄弟があり、友との交わりがあります。人倫の道がなければ、小さな家でもどうして治まるでしょう。小さな家を治めるのも仁、国や天下を治めるのも仁で、仁に二種類の違いがあるでしょうか。商人の仁愛も役に立つからこそ、先年の飢饉で救い米を出した者には、お上がみな褒美を下されました。飢えた人を救って人を死なせないのは、人の道です。」
解説

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