都鄙問答 / 卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段
答、其所ニ時ニ宜キコト有テ、一々ニコト分ルヽナリ、曰、其一々事ノ分ルト云ハ、如何ナルコトゾ、答、其奉公人、雙方同ジ器量ナラバ、門口ヲ先ヘ入タルヲ上ニ立ベシ、凡テ門口ヲナラビテ出入ハセズ、器量ニ甲乙有ラバ、器量ノ勝タルヲ上トスベシ、又役目ノ上ニテ云時ハ、先ニ進ムハ、同日ト云トモ、是ヲ上トスベシ、是皆天ノ爲所ニシテ、私ニアラズ、コヽヲ以テ時ニ宜キト云、
新字:答、其所ニ時ニ宜キコト有テ、一々ニコト分ルヽナリ、曰、其一々事ノ分ルト云ハ、如何ナルコトゾ、答、其奉公人、双方同ジ器量ナラバ、門口ヲ先ヘ入タルヲ上ニ立ベシ、凡テ門口ヲナラビテ出入ハセズ、器量ニ甲乙有ラバ、器量ノ勝タルヲ上トスベシ、又役目ノ上ニテ云時ハ、先ニ進ムハ、同日ト云トモ、是ヲ上トスベシ、是皆天ノ為所ニシテ、私ニアラズ、コヽヲ以テ時ニ宜キト云、
書き下し
答ふ、其の所に時に宜しきこと有りて、一々にこと分るるなり。曰く、其の一々事の分るると云ふは、如何なることぞ。答ふ、其の奉公人、双方同じ器量ならば、門口を先へ入りたるを上に立つべし。凡て門口をならびて出入はせず。器量に甲乙有らば、器量の勝りたるを上とすべし。又役目の上にて云ふ時は、先に進むは、同日と云ふとも、是を上とすべし。是皆天の為す所にして、私にあらず。ここを以て時に宜しきと云ふ。
現代語訳
梅岩は答えました。「それぞれの場に、その時にかなったやり方があって、一つひとつ筋が分かれるのです。」学者は言いました。「一つひとつ筋が分かれるとはどういうことですか。」梅岩は答えました。「その奉公人が二人とも同じ力量なら、門口を先に入った者を上に立てればよい。門口を並んで出入りすることはないのですから。力量に差があれば、力量の勝る者を上にします。役目のうえで言えば、同じ日であっても先に進み出た者を上とすればよい。これはみな天のなすところで、こちらの私意ではありません。だから時にかなうと言うのです。」
解説

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