都鄙問答 / 卷之二・鬼神ヲ遠ト云事ヲ問ノ段
曰、然リ、答、然ラバ、今此ニ人アツテイハン、汝ガ隣ノ娘ヲ、忰ニ妻セ度候、媒イタシ吳ラレヨ、禮金ヲヤラント云ハヾ、身ノ辱メヲ不顧、媒セラレンヤ、曰、夫ハ人ヲ賤タル待ナリ、金ニ目吳テ、爭媒ノ成ベキヤ、答、汝モ羞惡ノ心有テ、身ノ辱ハ受ザルナリ、況ヤ貴人ニ對シテ、何ニテモ御願ヒ申時ニ、此事成就ナシ被下ナバ、是程ノ金銀ヲ進ント云ルベキヤ、
新字:曰、然リ、答、然ラバ、今此ニ人アツテイハン、汝ガ隣ノ娘ヲ、忰ニ妻セ度候、媒イタシ呉ラレヨ、礼金ヲヤラント云ハヾ、身ノ辱メヲ不顧、媒セラレンヤ、曰、夫ハ人ヲ賤タル待ナリ、金ニ目呉テ、争媒ノ成ベキヤ、答、汝モ羞悪ノ心有テ、身ノ辱ハ受ザルナリ、況ヤ貴人ニ対シテ、何ニテモ御願ヒ申時ニ、此事成就ナシ被下ナバ、是程ノ金銀ヲ進ント云ルベキヤ、
書き下し
曰、然り。答、然らば、今此に人あつていはん。汝が隣の娘を、忰に妻せ度候、媒いたし呉られよ、礼金をやらんと云はゞ、身の辱めを顧ず、媒せられんや。曰、夫は人を賤たる待なり。金に目呉て、争媒の成べきや。答、汝も羞悪の心有て、身の辱は受ざるなり。況や貴人に対して、何にても御願ひ申時に、此事成就なし下されなば、是程の金銀を進んと云るべきや。
現代語訳
その人「そうです。」梅岩「では、ここに人がいて『あなたの隣の娘を息子の嫁にしたいので、仲人をしてくれ。礼金をやるから』と言ったら、恥も顧みずに仲人をしますか。」その人「それは人を卑しめた扱いです。金に目がくらんで仲人などできるものですか。」梅岩「あなたにも恥を知る心があるから、身の恥は受けないのです。まして身分の高い方に何かお願いするときに、『この事をかなえてくだされば、これほどの金銀を差し上げます』と言えるでしょうか。」
解説
梅岩は、神への願掛けを人間どうしの場面に置き換えて考えさせます。金で仲人を頼まれたら、普通の人でも侮辱と感じる。それは『孟子』公孫丑上篇が四端の一つに数える「羞悪の心」、恥を知る心があるからです。まして貴人に金銀を約束して願い事をするなど失礼きわまりない。神に鳥居を約束して願うのも同じ構図ではないか、という論法です。身近なたとえで相手自身に答えを言わせる、梅岩の問答の巧みさがよく出ています。
この章句が説くこと
羞悪恥礼賄賂問答
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