都鄙問答 / 卷之一・播州ノ人學問ノ事ヲ問ノ段
答、學問ト云フ者ハ、左樣ナルコトヲ直ス者ニテ候、實ハ御城下邊トハ申シナガラ、田舍ユヘニテモ候ヤ、曰、左ニハアラズ、其中七八分ホドハ、京都デモ、名アル衆中ニテ、學ベル者ドモニテ候、答、汝ノ物語ヲ聞ニ、其學シ人ハ、悉人倫ニ違ヘリ、敎ノ道ハ、人倫ヲ明カニスルノミ、師タル者、假令敵ニ敎ユレバトテ、聖人ノ道ニ背テ敎ユベキヤ、學問ノ道ハ、第一ニ身ヲ敬ミ、義ヲ以テ君ヲ貴、仁愛ヲ以テ父母ニ事、信ヲ以テ友ニ交リ、廣人ヲ愛、貧窮ノ人ヲ愍、功アレドモ不伐、衣類諸道具等ニ至マデ、約ヲ守テ美麗ヲナサズ、家業ニ疎ラズ、財寶ハ、入ヲ量テ出コトヲ知リ、法ヲ守テ家ヲ治ム、學問ノ道有增カクノ如シ、
新字:答、学問ト云フ者ハ、左様ナルコトヲ直ス者ニテ候、実ハ御城下辺トハ申シナガラ、田舎ユヘニテモ候ヤ、曰、左ニハアラズ、其中七八分ホドハ、京都デモ、名アル衆中ニテ、学ベル者ドモニテ候、答、汝ノ物語ヲ聞ニ、其学シ人ハ、悉人倫ニ違ヘリ、教ノ道ハ、人倫ヲ明カニスルノミ、師タル者、仮令敵ニ教ユレバトテ、聖人ノ道ニ背テ教ユベキヤ、学問ノ道ハ、第一ニ身ヲ敬ミ、義ヲ以テ君ヲ貴、仁愛ヲ以テ父母ニ事、信ヲ以テ友ニ交リ、広人ヲ愛、貧窮ノ人ヲ愍、功アレドモ不伐、衣類諸道具等ニ至マデ、約ヲ守テ美麗ヲナサズ、家業ニ疎ラズ、財宝ハ、入ヲ量テ出コトヲ知リ、法ヲ守テ家ヲ治ム、学問ノ道有增カクノ如シ、
書き下し
答、学問と云ふ者は、左様なることを直す者にて候。実は御城下辺とは申しながら、田舎ゆへにても候や。曰、左にはあらず、其中七八分ほどは、京都でも、名ある衆中にて、学べる者どもにて候。答、汝の物語を聞に、其学し人は、悉人倫に違へり。教の道は、人倫を明かにするのみ。師たる者、仮令敵に教ゆればとて、聖人の道に背て教ゆべきや。学問の道は、第一に身を敬み、義を以て君を貴、仁愛を以て父母に事、信を以て友に交り、広人を愛、貧窮の人を愍、功あれども伐らず、衣類諸道具等に至まで、約を守て美麗をなさず、家業に疎らず、財宝は、入を量て出ことを知り、法を守て家を治む。学問の道有増かくの如し。
現代語訳
梅岩「学問というものは、まさにそういうことを直すためのものです。お城下の近くとはいえ田舎だからでしょうか。」父親「いいえ、そのうち七八割は京都でも名のある先生方のもとで学んだ者たちです。」梅岩「お話を聞くと、その学んだ人たちはみな人の道に外れています。教えの道とは人倫を明らかにすることだけです。師たる者が、たとえ敵に教えるとしても、聖人の道に背いて教えるでしょうか。学問の道とは、第一に身を慎み、義をもって主君を尊び、仁愛をもって父母に仕え、信をもって友と交わり、広く人を愛し、貧しい人をあわれみ、手柄があっても誇らず、衣服や道具も倹約を守って飾らず、家業をおろそかにせず、財産は収入を量って支出を決め、決まりを守って家を治めることです。学問の道はおおよそこのようなものです。」
解説
この章句が説くこと
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