歎異抄 / 別序
そもそもかの御在生の昔、同じ志にして歩みを遼遠の洛陽に励まし、信を一つにして心を当来の報土にかけし輩は、同時に御意趣を承りしかども、その人々に伴いて念仏申さるる老若、その数を知らずおわします中に、聖人の仰せにあらざる異義どもを、近来は多く仰せられおうて候由、伝え承る。いわれなき条々の子細のこと。
書き下し
そもそもかの御在生の昔、同じ志にして歩みを遼遠の洛陽に励まし、信を一つにして心を当来の報土にかけし輩は、同時に御意趣を承りしかども、その人々に伴いて念仏申さるる老若、その数を知らずおわします中に、聖人の仰せにあらざる異義どもを、近来は多く仰せられおうて候由、伝え承る。いわれなき条々の子細のこと。
現代語訳
そもそも、あの親鸞聖人がご在世であった昔、同じ志を抱いて、はるか遠い都(京都)へと歩みを重ね、心を一つにして来世の浄土に思いをかけていた人々は、皆同じ趣旨のお言葉を聖人から直接聞いていたはずである。ところが、その人々に連れられて念仏を称える老若の門徒は数え切れないほどいる中に、聖人が仰せにならなかったはずの異なった教えの数々を、近ごろは多く説いているということが伝え聞かれる。いわれのない事柄について、以下に述べる。
解説
直接教えを聞いた世代から、また聞きの世代へと伝わっていく中で、いつの間にか教えが変質していくことへの危機感がここに書かれている。組織や集団で何かを継承しようとするとき、最初に聞いた言葉と、実際に広まっていく言葉との間には、どうしてもずれが生じる。このあと述べられる異義の指摘は、そのずれを一つひとつ正そうとする試みである。
この章句が説くこと
異義伝承のずれ門徒節度
関連する章句
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説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
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説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
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葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
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尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。
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葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
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論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。