酔古堂剣掃 / 集倩・王粲の憂情を銷す
玉檻連彩,粉壁迷明。動鮑昭之詩興,銷王粲之憂情。
書き下し
玉檻彩を連ね、粉壁明に迷ふ。 鮑昭の詩興を動かし、王粲の憂情を銷す。
現代語訳
玉で飾った欄干は色鮮やかに連なり、白く塗った壁はまばゆい光の中で目がくらむほどです。その眺めは鮑照(南朝宋の詩人)の詩心を動かし、王粲(後漢末の詩人)の憂いを消してくれます。
解説
美しい楼閣とそこからの眺めを、二人の詩人の名を借りてたたえた一則です。玉檻は玉で飾った欄干、粉壁は白く塗った壁で、どちらも華やかな建物の描写です。迷明は、明るさに目がくらむほど輝いているさまと読めます。鮑昭は南朝宋の詩人鮑照のことで、華麗で力強い詩風で知られます。王粲は後漢末の建安の七子の一人で、戦乱を避けて荊州に身を寄せていたとき、楼に登って故郷を思う「登楼賦」を作り、その憂いに満ちた名文で知られます。美しい楼閣の眺めは、詩人の創作意欲をかきたて、故郷を離れた人の愁いさえも消し去ってくれる、というわけです。美しい景色や場所には、人の心を動かし、癒す力があります。気持ちが沈んだときは、高いところから広い景色を眺めてみると、心が晴れていくかもしれません。
この章句が説くこと
楼閣詩風景憂い風雅
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・月千里に明らかなり曉に梁王の苑に入れば、雪群山に滿つ。 夜に庚亮の樓に登れば、月千里に明らかなり。
-
『酔古堂剣掃』集倩・白雲恒に墨痕の香を帶ぶ酒樓に高臥すれば、紅日も詩夢の醒むるを催さず。 花榭に漫書すれば、白雲恒に墨痕の香を帶ぶ。
-
『酔古堂剣掃』集靈・古今の絕藝を收めて山窗に置く滄海の日、赤城の霞、蛾眉の雪、巫峽の雲、洞庭の月、瀟湘の雨、彭蠡の煙、廣凌の濤、廬山の瀑布、宇宙の奇觀を合はせて、吾が齋壁に繪く。少陵の詩、摩詰の畫、左傳の文、馬遷の史、薛濤の箋、右軍の帖、南華經、相如の賦、屈子の離騷、古今の絕藝を收めて、我が山窗に置く。
-
『酔古堂剣掃』集倩・窗を推して河漢を仰ぐ香を焚きて樹を看れば、人事都て盡き、簾を隔てて花落ち、松梢に月上り、鐘聲忽ち度る。 窗を推して仰ぎ視れば、河漢に雲流れ、大いに晝時に勝る。 心を洗ひ慮を滌ひて意を爻象の表に得る者有るに非ずんば、獨り此の語に契ふべからず。
-
『酔古堂剣掃』集綺・紅顏薄命明月樓に當るも、高眠して避くるが如し、惜しいかな夜光の暗投。 芳樹窗に交はるも、把玩するに主無し、嗟矣紅顏の薄命。
-
『酔古堂剣掃』集景・愁樂交も集まる雲晴れて叆叆、石楚流滋、狂飆忽ち卷き、珠雨淋漓たり。 黃昏孤燈明滅し、山房清曠にして、意自ら悠然たり。 夜半松濤颶に驚き、蕉園瑯を鳴らし、窾坎の聲、疏密間ま發し、愁樂交も集まり、幽懷を寫すに足る。