酔古堂剣掃 / 集景・愁樂交も集まる
雲晴叆叆,石楚流滋,狂飆忽卷,珠雨淋漓。黃昏孤燈明滅,山房清曠,意自悠然。夜半松濤驚颶,蕉園鳴瑯,窾坎之聲,疏密間發,愁樂交集,足寫幽懷。
新字:雲晴叆叆,石楚流滋,狂飆忽巻,珠雨淋漓。黄昏孤灯明滅,山房清曠,意自悠然。夜半松濤驚颶,蕉園鳴瑯,窾坎之声,疏密間発,愁楽交集,足写幽懐。
書き下し
雲晴れて叆叆、石楚流滋、狂飆忽ち卷き、珠雨淋漓たり。 黃昏孤燈明滅し、山房清曠にして、意自ら悠然たり。 夜半松濤颶に驚き、蕉園瑯を鳴らし、窾坎の聲、疏密間ま發し、愁樂交も集まり、幽懷を寫すに足る。
現代語訳
雲がむくむくと湧き立ち、礎の石はじっとりと水気を帯び、激しい風がにわかに巻き起こって、玉のような雨がしたたり落ちます。黄昏には一つの灯火が明るくなったり暗くなったりし、山の住まいはすっきりと広く、心はおのずとゆったりしています。真夜中には松林が大波のような音を立てて暴風に驚き、芭蕉の庭では玉の鳴るような音がして、うつろな穴に響くような音が、まばらになったり激しくなったりしながら起こり、悲しみと楽しみがかわるがわる胸に集まって、胸の奥の思いを描き出すのにふさわしいのです。
解説
山中の嵐の一夜を、昼、黄昏、夜半と時を追って描いた一則です。叆叆は雲が厚く垂れこめるさまで、石楚流滋は、礎の石が湿って水気を帯びる、嵐の前触れを言うものとみられます。狂飆は激しいつむじ風、珠雨淋漓は玉のような雨粒がしたたり落ちるさまです。夜半の松濤は、風に揺れる松林の音を大波にたとえたもので、蕉園の瑯は芭蕉の葉を打つ雨音を玉の音にたとえています。窾坎は、宋の蘇軾が石鐘山記で、うつろな岩穴に水が当たって鳴る音を描いた言葉です。嵐の音を恐れるのではなく、その疎密の変化の中に自分の愁いと楽しみを重ね合わせて味わう姿勢が印象的です。
この章句が説くこと
自然心境嵐夜風雅
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