酔古堂剣掃 / 集倩・名づけて酒膽と為す
管輅請飲後言,名為酒膽:休文以吟致瘦,要是詩魔。
新字:管輅請飲後言,名為酒胆:休文以吟致痩,要是詩魔。
書き下し
管輅は飲みて後に言はんことを請ふ、名づけて酒膽と為す。 休文は吟を以て瘦を致す、要ず是れ詩魔なり。
現代語訳
管輅(三国魏の占い師)は酒を飲んでから話したいと願いました。これを酒の度胸と名づけます。休文(南朝の沈約)は詩を吟じることで痩せてしまいました。これはきっと詩の魔物のしわざです。
解説
酒と詩にまつわる二人の逸話を、ユーモラスに対にした一則です。管輅は三国時代の魏の人で、易による占いの名人として知られます。名士たちの前で議論を求められたとき、まず酒を飲ませてもらってから話したいと願い、酒の力を借りて見事に弁じたと伝えられます。酒膽は酒の力を借りて出る度胸のことです。休文は南朝の沈約の字で、晩年に体が痩せ細り、帯の穴を何度も縮めたと手紙に書いたことから、沈腰という言葉が生まれました。ここでは、その痩せたわけを詩作に打ち込みすぎたためと見て、詩魔、つまり詩に取りつく魔物のしわざだと言っています。どちらも、酒や詩に深く入れ込んだ人の姿を、少し誇張して面白がっています。何かに没頭すると、良くも悪くも人は変わるものだということを、おかしみを込めて伝えています。
この章句が説くこと
飲酒詩故事没頭諧謔
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