酔古堂剣掃 / 集倩・觀る者の趣は個中に倍す
柳下艤舟,花間走馬,觀者之趣,倍過個中。
新字:柳下艤舟,花間走馬,観者之趣,倍過個中。
書き下し
柳下に舟を艤し、花間に馬を走らす、觀る者の趣、個中に倍過す。
現代語訳
柳の下に舟を寄せて支度をし、花の間に馬を走らせる、それを見ている人の楽しさは、当の本人たちの楽しさの倍以上です。
解説
楽しみは、その中にいる人より、外から眺める人のほうが深く味わえることがある、という一則です。艤舟は舟を岸につけて出発の用意をすること、走馬は馬を走らせることです。柳の下の舟、花の間の馬という、春の華やかな遊びの情景です。個中は、その中、当事者のことです。舟や馬に乗っている本人たちは遊びに夢中で、自分たちが美しい景色の一部になっていることに気づいていません。ところが、それを離れたところから眺める人には、柳と舟、花と馬がつくる一幅の絵のような美しさが見えます。だから、見る者の趣のほうが倍にもなるというのです。自分が主役になって楽しむことも大切ですが、少し引いたところから眺めることで見えてくる美しさもあります。一歩引いて眺める目を持つと、世界はまた違って見えてくるものです。
この章句が説くこと
観照春風景風雅客観
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