酔古堂剣掃 / 集綺・春遊第一の風光
柳花燕子,貼地欲飛;畫扇練裙,避人欲進,此春遊第一風光也。
新字:柳花燕子,貼地欲飛;画扇練裙,避人欲進,此春遊第一風光也。
書き下し
柳花燕子、地に貼きて飛ばんと欲し、 畫扇練裙、人を避けて進まんと欲す。 此れ春遊第一の風光なり。
現代語訳
柳の綿毛と燕は、地面すれすれに飛ぼうとし、絵を描いた扇を持ち白絹のもすそをまとった女性たちは、人目を避けながらも前へ進もうとします。これこそ春の行楽のいちばんの眺めです。
解説
春の野遊びの情景を、自然と人の動きを重ねて描いた一則です。前の句は、柳の綿毛が舞い、燕が地面すれすれを飛ぶ様子です。後の句は、絵扇を手にし、練り絹の裳をまとった女性たちが、人目を恥じらって避けながらも、春の景色に誘われて前へ進もうとする様子です。欲飛と欲進という二つの「欲」が響き合い、どちらもためらいと勢いの入り混じった、今にも動き出しそうな一瞬をとらえています。昔の女性は外出の機会が少なく、春の行楽は貴重な楽しみでした。恥じらいながらも心弾ませる姿こそ、春の最も美しい風景だと著者は言います。季節が人の心を外へ誘い出す力を感じさせる句です。
この章句が説くこと
春遊行楽風景情趣艶麗
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