酔古堂剣掃 / 集景・興到りて欣然として獨り往く
杏花疏雨,楊柳輕風,興到欣然獨往;村落煙橫,沙灘月印,歌殘倏爾言旋。
新字:杏花疏雨,楊柳軽風,興到欣然独往;村落煙横,沙灘月印,歌残倏爾言旋。
書き下し
杏花疏雨、楊柳輕風、興到りて欣然として獨り往く。 村落煙橫たはり、沙灘月印し、歌殘りて倏爾として言に旋る。
現代語訳
杏の花にまばらな雨が降り、柳に軽い風がそよぐとき、興が湧けば、うれしくなって一人で出かけていきます。村里に靄がたなびき、砂浜に月の光が映るころ、歌も歌い尽くして、さっと帰ってきます。
解説
興の向くままに出かけ、興が尽きれば帰る、気ままな春の一日を描いた一則です。杏花疏雨と楊柳輕風は、春の穏やかな雨と風を表す対になった言葉です。興到りては、気持ちが動いたときにという意味で、予定を立てず心の動きのままに出かける気ままさを表しています。後半の村落煙橫たはりは夕暮れの村に靄がたなびくさま、沙灘月印しは砂浜に月の光が映るさまです。倏爾は、たちまち、さっとという意味で、言は語調を整える助字です。晋の王徽之が雪の夜に興に乗じて友を訪ね、門前まで来て興が尽きたと引き返した故事にも通じる、心の赴くままに行動する自由さが感じられます。
この章句が説くこと
閑適自由自然春散策
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『酔古堂剣掃』集景・路は杏花の酒舍に接す曲徑煙深く、路は杏花の酒舍に接す。 澄江日落ちて、門は楊柳の漁家に通ず。
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