酔古堂剣掃 / 集倩・世途は鳥道よりも眇かなり
宇宙雖寬,世途眇於鳥道;征逐日甚,人情浮比魚蠻。
新字:宇宙雖寛,世途眇於鳥道;征逐日甚,人情浮比魚蠻。
書き下し
宇宙寬しと雖も、世途は鳥道よりも眇かなり。 征逐日に甚だしく、人情の浮くこと魚蠻に比す。
現代語訳
天地は広いけれども、世渡りの道は鳥しか通れない山道よりも細く険しいものです。名利を追いかけ回すことは日ごとに激しくなり、人の心の浮ついていることは、水上を漂って暮らす漁民にも比べられるほどです。
解説
世の中の窮屈さと、人情の軽薄さを嘆いた一則です。宇宙は天地、この世界全体のことです。世界そのものは広いのに、人が世を渡る道は鳥道、つまり鳥しか通れないような細く険しい道よりもさらにかすかで狭い、と言います。眇はかすかで小さいさまです。後半の征逐は、名誉や利益を追いかけ回すこと、また酒宴などで互いに行き来して交わることを言います。魚蛮は、宋の蘇軾の詩「魚蛮子」にも詠まれた、舟の上で暮らし水に浮かんで生きる漁民のことと見られます。人の心が根無し草のようにふわふわと漂っているさまを、それにたとえているのでしょう。広い世界にいながら、名利を追うほど道は狭くなり、心は浮ついていくという指摘は、今の世の中にもそのまま当てはまりそうです。
この章句が説くこと
処世人情名利世途警句
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