酔古堂剣掃 / 集倩・逸の字は山林の關目
逸字是山林關目,用於情趣,則清遠多致;用於事務,則散漫無功。
新字:逸字是山林関目,用於情趣,則清遠多致;用於事務,則散漫無功。
書き下し
逸の字は是れ山林の關目なり、情趣に用ふれば、則ち清遠にして致多く、事務に用ふれば、則ち散漫にして功無し。
現代語訳
逸という字は、山林の暮らしの要となる字です。これを趣味や楽しみに用いれば、清らかで奥深く趣が豊かになりますが、仕事に用いれば、しまりがなくなって成果が上がりません。
解説
逸という一字の使いどころを、鋭く見分けた一則です。逸は、世俗の束縛から抜け出した自由さ、気ままさ、ゆとりを意味し、隠逸、逸民、逸興などの言葉にも使われます。関目はもともと芝居の筋の要所のことで、ここでは要となるものの意味です。山林に隠れ住む暮らしでは、この逸の心こそが大切です。その心を趣味や楽しみに向ければ、清遠、つまり清らかで奥行きのある、味わい深いものになります。ところが同じ心を仕事に持ち込むと、散漫になって成果が上がらないと言います。自由さやゆとりは美徳ですが、使う場所を間違えれば欠点になるという、実に現実的な指摘です。この書は風雅を好む文人の書でありながら、ここでは仕事と遊びのけじめを説いているところが興味深い点です。遊ぶときは存分に遊び、働くときはきちんと働くという切り替えは、今の私たちにも欠かせない知恵でしょう。
この章句が説くこと
処世けじめ隠逸仕事閑適
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