酔古堂剣掃 / 集倩・冰は筆上の花を分かつ
墨池寒欲結,冰分筆上之花;爐篆氣初浮,不散簾前之霧。
新字:墨池寒欲結,冰分筆上之花;炉篆気初浮,不散簾前之霧。
書き下し
墨池寒くして結ばんと欲し、冰は筆上の花を分かつ。 爐篆氣初めて浮かび、簾前の霧を散ぜず。
現代語訳
硯の墨池は寒さで凍りつきそうで、張った氷は筆先に咲く花を分けるように割れます。香炉から篆字の形の煙が立ちのぼり始め、簾の前の霧のように漂って散りません。
解説
冬の書斎の、寒さと静けさを細やかに描いた一則です。墨池は硯の墨をためるくぼみのことで、寒さで墨が凍りそうになっている様子が描かれています。筆上之花は、唐の李白が若いころ、筆の先に花が咲く夢を見て、その後文才が開いたという夢筆生花の故事を思わせる言葉で、すぐれた文章を生む筆のことも暗に言っています。凍った墨に筆を入れると、氷が割れて花のように見える、という観察とも読めます。後半の炉篆は、香を篆字の形に並べて焚く篆香、またその煙のことです。香の煙が立ちのぼり、簾の前で霧のように漂っている様子に、冷たく静かな部屋の空気が感じられます。寒い日に書斎で筆をとり、香を焚くというのは、冬ならではの贅沢な時間です。季節ごとの書斎の楽しみ方を教えてくれる句です。
この章句が説くこと
書斎冬香書道風雅
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