酔古堂剣掃 / 集倩・寒江獨釣圖の中に在り
紅寥灘頭,青林古岸,西風撲面,風雪打頭,披蓑頂笠,執竿煙水,儼然在米芾《寒江獨釣圖》中。
新字:紅寥灘頭,青林古岸,西風撲面,風雪打頭,披蓑頂笠,執竿煙水,儼然在米芾《寒江独釣図》中。
書き下し
紅寥の灘頭、青林の古岸、西風面を撲ち、風雪頭を打つ、蓑を披り笠を頂き、竿を煙水に執れば、儼然として米芾の『寒江獨釣圖』中に在り。
現代語訳
紅い蓼の咲く早瀬のほとり、青い林の古い岸辺で、西風が顔を打ち、風雪が頭を打ちつけるなか、蓑をまとい笠をかぶって、もやに煙る水面に釣り竿を差し出せば、まるで米芾(宋の書家・画家)の描いた『寒江独釣図』の中にいるようです。
解説
寒い川辺での釣りを、一幅の絵の中に入り込んだ体験として描いた一則です。紅寥は、水辺に紅い穂をつける蓼のことと見て読みました。蓑笠をつけて寒い川で一人釣りをする姿は、唐の柳宗元の詩「江雪」の、孤舟蓑笠の翁、独り釣る寒江の雪、という名句以来、孤高の隠者の象徴とされてきました。米芾は北宋の書家・画家で、奇行でも知られる人物です。寒江独釣図は、その柳宗元の詩の世界を描いた画題として好まれたもので、ここでは米芾の作として挙げられています。つらいはずの寒風や雪も、絵の中にいると思えば、美しい情景の一部に変わります。厳しい状況にあるときも、少し引いて一枚の絵のように眺めてみると、心に余裕が生まれるかもしれません。
この章句が説くこと
隠逸釣り絵画冬風雅
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