酔古堂剣掃 / 集倩・帶葉の柴門
落紅點苔,可當錦褥;草香花媚,可當嬌姬。莫逆則山鹿溪鷗,鼓吹則水聲鳥囀。毛褐為紈綺,山雲作主賓。和根野菜,不釀侯鯖;帶葉柴門,奚輸甲第。
新字:落紅点苔,可当錦褥;草香花媚,可当嬌姫。莫逆則山鹿渓鴎,鼓吹則水声鳥囀。毛褐為紈綺,山雲作主賓。和根野菜,不醸侯鯖;帯葉柴門,奚輸甲第。
書き下し
落紅苔に點ずれば、錦褥に當つべく、草香り花媚ぶれば、嬌姬に當つべし。 莫逆は則ち山鹿溪鷗、鼓吹は則ち水聲鳥囀。 毛褐を紈綺と為し、山雲を主賓と作す。 根を和する野菜は、侯鯖に讓らず、葉を帶ぶる柴門は、奚ぞ甲第に輸けん。
現代語訳
散った紅い花びらが苔の上に点々と落ちていれば、錦の敷物の代わりになり、草が香り花があでやかに咲いていれば、愛らしい美女の代わりになります。心を許し合う友は山の鹿や谷川のかもめ、楽隊の音楽は水の音と鳥のさえずりです。粗末な毛織りの衣を上等な絹とし、山の雲を主人と客とします。根のついたままの野菜は、貴族のごちそうにも劣らず、葉のついた柴の門は、どうして立派な邸宅に負けることがありましょうか。
解説
山中の簡素な暮らしが、贅沢な暮らしに少しも劣らないことを、一つ一つ置き換えて示した一則です。落紅は散った花、錦褥は錦の敷物、嬌姫は愛らしい美女です。苔に散る花びらが錦の敷物に、香る草花が美女の代わりになると言います。莫逆は『荘子』に由来する言葉で、心に逆らうものがない親友のことです。鼓吹は軍楽や宴の楽隊を指します。毛褐は粗末な毛織物、紈綺は白い練り絹と綾絹で、ぜいたくな衣です。侯鯖は前漢の五侯の家から集めた料理を合わせたという豪華なごちそうです。原文の「釀」は、後の句の「輸」との対から「讓」の書き誤りと見て、劣らないと読みました。甲第は第一等の邸宅です。持ち物の豪華さではなく、それを味わう心の豊かさが暮らしの質を決めるのだと教えてくれます。
この章句が説くこと
清貧知足隠逸見立て自然
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