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酔古堂剣掃 / 集倩・閑中の滋味

晨起推窗,紅雨亂飛,閑花笑也;綠樹有聲,閑鳥啼也;煙嵐滅沒,閑雲度也;藻荇可數,閑池靜也;風細簾青,林空月印,閑庭峭也。山扉晝扃,而剝啄每多閑侶;帖括因人,而幾案每多閑編。繡佛長齋,禪心釋諦,而念多閑想,語多閑詞。閑中滋味,洵足樂也。

新字:晨起推窗,紅雨乱飛,閑花笑也;緑樹有声,閑鳥啼也;煙嵐滅没,閑雲度也;藻荇可数,閑池静也;風細簾青,林空月印,閑庭峭也。山扉昼扃,而剥啄毎多閑侶;帖括因人,而幾案毎多閑編。繍仏長斎,禅心釈諦,而念多閑想,語多閑詞。閑中滋味,洵足楽也。

書き下し

晨に起きて窗を推せば、紅雨亂れ飛ぶ、閑花笑ふなり。 綠樹聲有り、閑鳥啼くなり。 煙嵐滅沒す、閑雲度るなり。 藻荇數ふべし、閑池靜かなり。 風細く簾青く、林空しく月印す、閑庭峭なり。 山扉晝も扃せども、剝啄每に閑侶多し。 帖括は人に因れども、几案每に閑編多し。 繡佛長齋、禪心釋諦、而して念ひに閑想多く、語に閑詞多し。 閑中の滋味、洵に樂しむに足るなり。

現代語訳

朝起きて窓を押し開けると、紅い雨のように花びらが乱れ飛んでいます。のどかな花が笑っているのです。緑の木々に声がするのは、のどかな鳥が鳴いているのです。山のもやが現れては消えるのは、のどかな雲が渡っているのです。水草が数えられるほど見えるのは、のどかな池が静まっているからです。風はそよそよと簾は青く、林はがらんとして月の光が映っている、のどかな庭が引き締まって見えます。山の家の扉は昼も閉ざしているのに、戸をたたいて訪れるのはいつものどかな仲間ばかりです。受験用の参考書は人任せにしていても、机の上にはいつものんびり読む本がたくさんあります。仏を刺繍して長く精進を続け、禅の心で仏の教えを味わっていても、思いにはのどかな想いが多く、言葉にはのどかな言葉が多いのです。のどかさの中の味わいは、まことに楽しむに足るものです。

解説

閑という一字を繰り返し用いて、朝から夜まで、身の回りのすべてがのどかである暮らしを描いた一則です。花が散るのを花が笑うと言い、鳥の声、雲の流れ、澄んだ池、月の映る庭と、自然のすべてに閑の字をかぶせていきます。紅雨は雨のように舞い散る紅い花びら、藻荇は水草、峭はきりりと引き締まったさまです。後半は人の営みに移り、訪ねてくる友も、机の上の本も、信仰の心までも閑に染まっていると言います。剥啄は戸をとんとんとたたく音、帖括は科挙の受験用の要約本です。繍仏長斎は仏像を刺繍し長く精進潔斎することです。同じ字を重ねるうちに、読む者の心までゆったりしてくるような文章です。忙しさを誇りがちな今こそ、閑を楽しむ力の大切さを思い出させてくれます。

この章句が説くこと

閑適隠逸自然風雅

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