酔古堂剣掃 / 集倩・淡黛を山妝に拭ふ
雲落寒潭,滌塵容於水鏡;月流深谷,拭淡黛於山妝。
書き下し
雲寒潭に落ちて、塵容を水鏡に滌ひ、 月深谷に流れて、淡黛を山妝に拭ふ。
現代語訳
雲が冷たい淵に映り込むと、水の鏡で塵にまみれた顔を洗っているかのようで、月の光が深い谷に流れ込むと、山の化粧から淡い眉墨をぬぐい取っているかのようです。
解説
雲と月を、化粧をする女性の姿に見立てた、艶麗で美しい一則です。前半では、雲が冷たく澄んだ淵に映るさまを、水を鏡にして塵に汚れた顔を洗い清めているようだと言います。後半の淡黛は、薄く引いた眉墨のことで、遠くの山の青い稜線は、しばしば美人の眉にたとえられてきました。山妝は山の化粧した姿です。月の光が深い谷に流れ込み、山の輪郭を白く照らすと、その淡い青が拭い取られたように見える、という繊細な観察です。雲も月も山も、まるで身づくろいをする女性のように生き生きと描かれています。自然を人の姿に重ねて見る感性は、中国の詩文の伝統でもあり、日本の和歌にも通じます。見慣れた山や空も、こうした見立てで眺めると、新しい表情が見えてくるでしょう。
この章句が説くこと
見立て月雲山艶麗
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