酔古堂剣掃 / 集素・一山波中に映在す
霜水澄定,凡懸崖峭壁;古木垂蘿,與片雲纖月;一山映在波中,策杖臨之,心境俱清絕。
新字:霜水澄定,凡懸崖峭壁;古木垂蘿,与片雲繊月;一山映在波中,策杖臨之,心境倶清絶。
書き下し
霜水澄定し、凡そ懸崖峭壁、古木垂蘿、片雲纖月と、一山波中に映在す。 杖を策きて之に臨めば、心境俱に清絕なり。
現代語訳
霜の降りる季節の水は澄んで静まり返り、切り立った崖や険しい岩壁、古木や垂れ下がるつたかずら、ひとひらの雲と細い月まで、山全体が波の中に映っています。杖をついてその水辺に臨むと、心も景色もともにこの上なく清らかです。
解説
秋冬の澄んだ水面に映る山の姿を描いた一則です。霜水は霜の降りる季節の冷たい水、澄定は澄んで静まることです。懸崖峭壁は切り立った崖、垂蘿は垂れ下がるつる草、繊月は細い三日月です。こうした山のすべてが波の上に映り込み、水面にもう一つの山が現れます。策杖は杖をつくこと、清絶はこの上なく清らかなことです。水が澄んで静かだからこそ景色が乱れずに映るのであり、それは心が静まれば物事がありのままに見えることのたとえとも読めます。心が波立っているときは、まず水を澄ませるように自分を落ち着かせることから始めたいものです。
この章句が説くこと
清澄自然山水静寂心境
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・霽色一新す山を雨後に看れば、霽色一新し、便ち青山の倍ます秀づるを覺ゆ。 月を江中に玩べば、波光千頃、頓に明月をして輝きを增さしむ。
-
『酔古堂剣掃』集景・神情爽やかに滌はる一抹の萬家、煙樹色に橫たはり、翠樹流れんと欲し、淺深間ま布き、心目競ひ觀て、神情爽やかに滌はる。
-
『酔古堂剣掃』集靈・景澄めば則ち岩岫鏡を開く景澄めば則ち岩岫鏡を開き、風生ずれば則ち芳樹芬りを流す。
-
『酔古堂剣掃』集素・千岩秀を競ひ萬壑流れを爭ふ潭澗の間、清流注ぎ瀉ぎ、千岩秀を競ひ、萬壑流れを爭ふ。 卻つて自ら胸に宿物無く、清流に漱げば、人をして濯濯として清虛ならしむ。 日來惟だに人の情をして開滌せしむるのみに非ず、一往深情有りと謂ふべし。
-
『酔古堂剣掃』集素・落葉を煨きて紅爐と為す山房の磬は、綠玉に非ずと雖も、沉明輕清の韻、盡く清歌を節し俗耳を洗ふべし。 山居の樂しみ、頗る冷趣に愜ふ。落葉を煨きて紅爐と為し、況んや暄を岩戶に負ふをや。 土鼓梅を催し、荻灰地を暖む。潛凜以て蕭索たりと雖も、素柯の歲を凌ぐを見る。 同雲流れず、舞雪醉ふが如し。野は曠きに因りて冷やかに舒び、山は靜かなるを以て晦からず。 枯魚懸かる在り、濁酒已に注ぐ。朋徒我に從ひ、寒盟固むべし。 歲暮を天涯に驚かず、即ち是れ纊を孤嶼に挾むなり。
-
『酔古堂剣掃』集景・秋は山に入りて倍ます清し山は秋を經て轉た淡く、秋は山に入りて倍ます清し。