酔古堂剣掃 / 集豪・翠に眉黛を勻ふ
紅潤口脂,花蕊乍過微雨;翠勻眉黛,柳條徐拂輕風。
新字:紅潤口脂,花蕊乍過微雨;翠勻眉黛,柳条徐払軽風。
書き下し
紅く口脂を潤すは、花蕊の乍ち微雨を過ぐるがごとく、 翠に眉黛を勻ふは、柳條の徐ろに輕風に拂はるるがごとし。
現代語訳
紅い口紅でしっとりと唇を潤した様子は、花のしべがさっと小雨を通り過ぎたばかりのようです。翠の眉墨を均しく引いた様子は、柳の枝がゆっくりとそよ風に撫でられているようです。
解説
美しい女性の化粧を、雨上がりの花と風になびく柳にたとえた一則です。口脂は口紅、眉黛は青黒い眉墨のことです。前の句は、紅をさした唇のみずみずしさを、小雨に濡れたばかりの花のしべにたとえています。後の句は、翠に整えて引いた眉の形の美しさを、そよ風にゆったりとなびく柳の枝にたとえています。女性の眉を柳の葉にたとえる柳眉という言葉もあります。豪放な言葉を集めた集豪の中にこの艶麗な句が置かれているのはやや意外ですが、花と柳という自然の生気を借りて人の美しさを描く手法は見事です。美しさを、物の形ではなく、雨や風がもたらす生き生きとした瞬間として描いているところが印象的です。
この章句が説くこと
化粧見立て艶麗柳花
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