酔古堂剣掃 / 集倩・一片の秋色客病を療す
一片秋色,能療客病;半聲春鳥,偏喚愁人。
新字:一片秋色,能療客病;半声春鳥,偏喚愁人。
書き下し
一片の秋色、能く客病を療し、 半聲の春鳥、偏へに愁人を喚ぶ。
現代語訳
ひとひらの秋の景色は、旅人の病を癒すことができ、半分ほどの春の鳥の声は、ことさらに愁いを抱く人を呼び起こします。
解説
秋と春の景色が人の心にもたらす、意外な作用を対にした一則です。客病は旅先で患う病、または旅人の憂いから来る心の病を指します。ふつう秋は寂しさを誘う季節とされますが、ここでは澄んだ秋の景色がかえって旅人の心身を癒すと言います。後半の半声は、途切れがちなかすかな鳴き声のことです。春の鳥の声は明るく楽しいものとされますが、愁いを抱く人には、そのかすかな声がかえって心に響き、悲しみを呼び覚ましてしまうのです。偏は、ことさらに、よりによって、という意味です。寂しいはずの秋が癒しとなり、明るいはずの春が愁いを誘うという逆説に、人の心の複雑さがとらえられています。同じ景色でも、受け取る人の心によって薬にも毒にもなるのでしょう。自分の心の状態に合った景色を選ぶことも、心の養生の一つです。
この章句が説くこと
季節秋春心境養生
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