酔古堂剣掃 / 集倩・一生の春夢
一聲秋雨,一行秋雁,消不得一室清燈;一月春花,一池春草,繞亂卻一生春夢。
新字:一声秋雨,一行秋雁,消不得一室清灯;一月春花,一池春草,繞乱却一生春夢。
書き下し
一聲の秋雨、一行の秋雁、一室の清燈を消し得ず。 一月の春花、一池の春草、一生の春夢を繞亂し卻く。
現代語訳
ひと声の秋の雨、ひと列の秋の雁も、一部屋を照らす清らかな灯火を消すことはできません。ひと月の春の花、ひと池の春の草は、一生の春の夢をすっかりかき乱してしまいます。
解説
一の字を重ねて、秋と春の心の動きを対比した一則です。秋の雨音や雁の列は、寂しさを誘うものですが、一室の清らかな灯火、つまり書斎で静かに学ぶ心を消すことはできません。消不得は、消そうとしても消せない、という意味です。これに対して春の花や草は、華やかで心を浮き立たせ、一生の春夢をかき乱してしまうと言います。春夢は春の夜の夢、はかない夢のことで、若い日の恋や憧れ、人生の華やかな夢を指しているとも読めます。繞乱は、まとわりついてかき乱すことです。寂しさには耐えられても、華やかさにはかえって心が乱される、という人間の心の不思議がとらえられています。つらいときより、楽しく浮かれたときにこそ、自分を見失わないよう気をつけたいものです。
この章句が説くこと
季節心境春秋灯火
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