酔古堂剣掃 / 集倩・香魂夜發す
花影零亂,香魂夜發,囅然而喜。燭既盡,不能寐也。
新字:花影零乱,香魂夜発,囅然而喜。燭既尽,不能寐也。
書き下し
花影零亂し、香魂夜發す、囅然として喜ぶ。 燭既に盡くれども、寐ぬる能はざるなり。
現代語訳
花の影が入り乱れ、花の香りの精が夜に立ちのぼり、思わずにっこりと喜びます。ろうそくはもう燃え尽きたのに、眠ることができません。
解説
夜の花の美しさに心を奪われ、眠れなくなるひとときを描いた一則です。零乱は、ばらばらに入り乱れるさまで、月の光や灯火に照らされた花の影が揺れ動く様子を言います。香魂は花の香りを花の魂にたとえた言葉で、夜になるといっそう強く香り立つ花の気配を表しています。囅然は、にっこりと笑うさまです。北宋の蘇軾は海棠の詩で、夜更けに花が眠ってしまうのを恐れて、高く蝋燭を灯して花を照らした、と詠みました。この一則も、灯が尽きても花を想って眠れないという、花に魅せられた心を伝えています。美しいものに出会ったときの、胸が高鳴って眠れないほどの喜びは、年を重ねても大切にしたい感覚です。夜の庭や窓辺の花に、ふと目を留めてみたくなります。
この章句が説くこと
花夜香喜び風雅
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