酔古堂剣掃 / 集情・韓壽の香薰も亦た偷むに任す
但覺夜深花有露,不知人靜月當樓,何郎燭暗誰能詠,韓壽香薰亦任偷。
新字:但覚夜深花有露,不知人静月当楼,何郎燭暗誰能詠,韓寿香薫亦任偸。
書き下し
但だ覺ゆ夜深くして花に露有るを、知らず人靜かにして月の樓に當るを、何郎の燭暗く誰か能く詠ぜん、韓壽の香薰も亦た偷むに任す。
現代語訳
ただ夜が更けて花に露が置いたことだけを感じ、人が寝静まって月が楼の真上にかかっていることにも気づきません。何郎の燭は暗くなって、もう誰が詩を詠めるでしょう。韓寿の香りも、盗まれるに任せておきましょう。
解説
恋にひたる二人の夜を、故事を借りて描いた艶やかな一則です。花の露に気づいても月には気づかないとは、互いのことだけに夢中で周りが見えていない様子です。何郎は詩才で知られた南朝の何遜を指すとみられ、灯が暗くなってもう詩どころではないということです。韓寿は晋の美男で、賈充の娘が父の秘蔵する西域の香をこっそり彼に贈り、その香りで二人の仲が露見したと伝えられます。偷むに任すとは、ひそかな恋をとがめないという意味です。人が何かに夢中になると時間も周りも忘れる、その幸福な没頭を、恋に限らず仕事や趣味にも見ることができます。
この章句が説くこと
情恋愛故事夜没頭
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