酔古堂剣掃 / 集綺・銀焰熒煌
花顏縹緲,欺樹裏之春風;銀焰熒煌,卻城頭之曉色。
新字:花顔縹緲,欺樹裏之春風;銀炎熒煌,却城頭之暁色。
書き下し
花顏縹緲として、樹裏の春風を欺き、 銀焰熒煌として、城頭の曉色を卻く。
現代語訳
花のような顔がほのかに美しく浮かび、木々の間を吹く春風さえ及ばないほどです。銀色の炎がきらきらと輝いて、城壁の上に差す夜明けの光をも退けてしまいます。
解説
華やかな夜の光景を、美しい顔と輝く灯火とで描いた一則です。縹緲は、ほのかでかすかに見える様子、熒煌は光がきらめき輝く様子です。前の句は、夜の中にほのかに浮かぶ花のような顔が、春風に揺れる木々の花よりも美しいと言います。後の句は、銀色に輝く灯火が夜明けの光さえ押し返すほど明るいと言い、宴が夜を徹して続く様子を思わせます。元宵の灯籠の夜のような、灯火と人々が輝く祭りの情景とも読めます。美しい人と明るい灯火の組み合わせは、一夜の華やぎの象徴です。朝が来るのを惜しむほど楽しい夜は、誰にとっても忘れがたい思い出になるものです。
この章句が説くこと
夜宴灯火艶麗風景華やぎ
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集倩・香魂夜發す花影零亂し、香魂夜發す、囅然として喜ぶ。 燭既に盡くれども、寐ぬる能はざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集靈・秋漢の星を含むに似たり既に景華にして彩を凋め、亦た密に照らして疏らに明らかなり。 春陽の蘤を揚ぐるが若く、秋漢の星を含むに似たり。
-
『酔古堂剣掃』集綺・珠懸かりて花更に生ず花抽んでて珠落ち、珠懸かりて花更に生ず。 風來りて香轉た散じ、風度りて焰還た輕し。
-
『酔古堂剣掃』集綺・紅顏薄命明月樓に當るも、高眠して避くるが如し、惜しいかな夜光の暗投。 芳樹窗に交はるも、把玩するに主無し、嗟矣紅顏の薄命。
-
『酔古堂剣掃』集綺・朱陽升りて花笑ふ黃庭の靃霏に紛れ、重廊の窈窕に隱る。 青陸至りて鶯啼き、朱陽升りて花笑ふ。 紫蒂紅蕤、玉蕊蒼枝。
-
『酔古堂剣掃』集綺・紅妝翠袖の間に在るが如し朱樓綠幕、笑語は別座の春を勾き、越舞吳歌、巧舌は蓮花の艷を吐く。 此の身怨臉愁眉、紅妝翠袖の間に在るが如く、遠きが若く近きが若く、之が爲に黯然たり。 嗟乎、又何ぞ怪しまんや、身其の際に當る者の、玉床の翠を擁して心迷ひ、伶人の奏を聽きて涕を隕すを。 集綺第九。