酔古堂剣掃 / 集綺・珠懸かりて花更に生ず
花抽珠落,珠懸花更生。風來香轉散,風度焰還輕。
新字:花抽珠落,珠懸花更生。風来香転散,風度炎還軽。
書き下し
花抽んでて珠落ち、珠懸かりて花更に生ず。 風來りて香轉た散じ、風度りて焰還た輕し。
現代語訳
花が伸び出ると玉がこぼれ落ち、玉が垂れ下がるとまた花が生まれます。風が吹いてくると香りはいよいよ散り広がり、風が渡っていくと炎はまた軽やかに揺らめきます。
解説
灯火の姿を、花と玉にたとえて描いた詩のような一則です。焔という字があることから、ろうそくや灯明の炎を詠んだものと読めます。灯芯の先にできる燃えかすの塊は灯花と呼ばれ、花のように見えるものでした。前の二句は、灯花が伸び出ると蝋のしずくが玉のように落ち、しずくが垂れるとまた灯花が生まれるという、炎の移ろいを描いています。後の二句は、風が吹くと香りが散り、風が過ぎると炎が軽やかに揺れる様子です。昔は、灯花が咲くと吉事の前触れとも言われました。夜の灯火をじっと見つめ、その細かな変化を花と玉の繰り返しとして楽しむ、静かな夜の遊び心が感じられます。
この章句が説くこと
灯火夜見立て風雅閑寂
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集情・燈は細花を結ぶ燈は細花を結びて穗と成りて落ち、淚は愁字に題して痕を帶びて紅なり。
-
『酔古堂剣掃』集倩・香魂夜發す花影零亂し、香魂夜發す、囅然として喜ぶ。 燭既に盡くれども、寐ぬる能はざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
-
『酔古堂剣掃』集綺・銀焰熒煌花顏縹緲として、樹裏の春風を欺き、 銀焰熒煌として、城頭の曉色を卻く。
-
『酔古堂剣掃』集豪・夜深くして花は睡る雲破れて月は窺ふ花の好き處、夜深くして花は睡る月明の中。
-
『酔古堂剣掃』集綺・竹粉瑯玕の碧に映ず竹粉は瑯玕の碧に映じ、新妝の流媚に勝り、曾て面を花宮に掩ふ無し。 花珠は翡翠の盤に凝り、什襲すと雖も珍に非ず、頷を龍藏に探るを兔るべし。