酔古堂剣掃 / 集綺・一夜の鵑啼
斷雨斷雲,驚魄三春蝶夢;花開花落,悲歌一夜鵑啼。
新字:断雨断雲,驚魄三春蝶夢;花開花落,悲歌一夜鵑啼。
書き下し
斷雨斷雲、魄を驚かす三春の蝶夢。 花開き花落ち、悲歌す一夜の鵑啼。
現代語訳
雨が途切れ雲が途切れるように、春三月の蝶の夢は、魂を驚かせて覚めてしまいます。花が咲いては散り、ほととぎすが一晩じゅう悲しげに鳴き続けます。
解説
はかなく終わった恋と、過ぎゆく春の悲しみを重ねた一則です。雲雨は、楚の宋玉の「高唐賦」で巫山の神女が朝は雲、夕べは雨となると語ったことから、男女の契りを指す言葉となりました。断雨断雲はその途絶えを言います。蝶夢は、荘子が蝶になった夢を見た話で、ここでは甘く短い夢を意味します。後の句の鵑は杜鵑、ほととぎすで、蜀の望帝の魂が化したとされ、血を吐くまで鳴くという伝説から、悲しみの鳥として詠まれます。花の開落とともに一晩鳴き明かす声に、失ったものへの嘆きが託されています。美しい時が過ぎ去るのを惜しむ心を、典故を重ねて濃やかに表した句です。
この章句が説くこと
無常恋慕春愁情杜鵑
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