酔古堂剣掃 / 集韻・蛩は秋聲を遞ふ
鳥銜幽夢遠,只在數尺窗紗,蛩遞秋聲悄,無言一龕燈火。
新字:鳥銜幽夢遠,只在数尺窗紗,蛩逓秋声悄,無言一龕灯火。
書き下し
鳥は幽夢を銜みて遠きも、只だ數尺の窗紗に在り。蛩は秋聲を遞へて悄かに、言無き一龕の燈火あり。
現代語訳
鳥が静かな夢をくわえて遠くへ運び去ったかのようですが、実はわずか数尺の窓の薄絹の向こうにいるだけです。こおろぎは秋の声を伝えてひっそりと鳴き、黙ったままの厨子の灯火が一つともっています。
解説
秋の夜のもの寂しい室内を描いた対句です。幽夢は淡くはかない夢、窓紗は窓に張った薄絹です。夢が遠く去ったように感じても、隔てているのは薄い紗一枚にすぎない、と夢とうつつの近さを言っています。蛩はこおろぎで、秋の声を代表する虫です。龕は仏像などを納める小さな厨子や壁のくぼみで、そこにともる灯火は黙って夜を照らしています。音と光だけで静けさを描く手法が見事です。忙しい日々では、こうした小さな音や灯りに気づく余裕を失いがちです。夜に灯りを落とし、虫の声に耳を澄ます時間を持つと、心がほどけていきます。
この章句が説くこと
風雅閑適秋静寂自然
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