酔古堂剣掃 / 集綺・一尊の芳草
繞夢落花消雨色,一尊芳草送晴昏。
書き下し
夢を繞る落花雨色に消え、 一尊の芳草晴昏を送る。
現代語訳
夢のまわりをめぐって散る花は、雨の色の中に消えていき、一樽の酒を前に、香り高い草の中で晴れた日の夕暮れを見送ります。
解説
春の終わりの物憂い一日を、雨と夕暮れで描いた一則です。前の句は、夢の中にまで舞い込んでくるような落花が、降る雨の色に溶けて消えていく様子です。散る花と雨は、過ぎゆく春の象徴で、夢のようにはかない時間を思わせます。後の句は、雨が上がった後、一樽の酒を手に香り高い草の中に座り、晴れた日の夕暮れを見送る様子です。尊は酒樽のことです。雨の日と晴れの日、昼と夕べとが一句の中で移り変わり、春の日々が静かに過ぎていく感覚が伝わってきます。慌ただしい毎日の中では、季節の終わりに気づかずに過ごしてしまいがちです。ときには過ぎゆくものを静かに見送る時間を持ちたいものです。
この章句が説くこと
晩春落花閑適酒無常
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