酔古堂剣掃 / 集倩・湘妃數點の愁淚
梅稱清絕,多卻羅浮一段妖魂;竹本蕭疏,不耐湘妃數點愁淚。
新字:梅称清絶,多却羅浮一段妖魂;竹本蕭疏,不耐湘妃数点愁涙。
書き下し
梅は清絕と稱せらるるも、羅浮一段の妖魂を多くし卻く。 竹は本蕭疏なるも、湘妃數點の愁淚に耐へず。
現代語訳
梅はこの上なく清らかだと言われますが、羅浮山の一件の妖しい魂の話が余計です。竹はもともとさっぱりとしたものですが、湘妃が流した幾滴かの愁いの涙には耐えられません。
解説
清らかさで知られる梅と竹に、艶やかな伝説がまとわりついていることを、少しからかうように述べた一則です。羅浮は広東の羅浮山で、隋の趙師雄がそこで美しい女性と酒を酌み交わし、酔いから覚めると大きな梅の木の下に寝ていたという話が、唐代の小説に見えます。女性は梅の精だったのです。湘妃は古代の聖王舜の二人の妃、娥皇と女英で、舜の死を悲しんで流した涙が竹に落ち、斑の模様になったと伝えられ、その竹を湘妃竹と呼びます。清らかさの象徴である梅と竹に、恋の情や愁いの涙という艶な物語が加わることを、多却、不耐と言って、惜しむような口ぶりで語っています。しかしその実、こうした物語が梅と竹にいっそうの奥行きを与えているとも読めます。清らかさと情の深さは、案外共存するものなのかもしれません。
この章句が説くこと
梅竹伝説恋情風雅
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