酔古堂剣掃 / 集素・暗香浮動、疏影橫斜の趣
春初玉樹參差,冰花錯落,瓊台奇望,恍坐玄圃,羅浮若非;黃昏月下,攜琴吟賞,杯酒留連,則暗香浮動,疏影橫斜之趣,何能真實際。
新字:春初玉樹参差,冰花錯落,瓊台奇望,恍坐玄圃,羅浮若非;黄昏月下,攜琴吟賞,杯酒留連,則暗香浮動,疏影横斜之趣,何能真実際。
書き下し
春初、玉樹參差として、冰花錯落たり、瓊台の奇望、恍として玄圃に坐し、羅浮なるか非なるかのごとし。 黃昏月下、琴を攜へて吟賞し、杯酒留連すれば、則ち暗香浮動、疏影橫斜の趣、何ぞ能く真に實際ならんや。
現代語訳
春の初め、玉のような木々が高く低く並び、氷のような白い花が入り交じって咲いています。玉の楼台からの眺めはすばらしく、ぼんやりと仙境の玄圃に座っているようで、梅の名所の羅浮山にいるのかどうかもわからなくなるほどです。黄昏時の月の下で、琴を携えて詩を吟じて愛で、杯を重ねて去りがたく過ごしていると、林逋が「暗香浮動し、疏影横斜す」と詠んだ梅の趣が、これほど真に迫って目の前に現れることがほかにありましょうか。
解説
早春の梅林を、仙境になぞらえて讃えた一則です。玉樹と冰花は白梅の木と花を言い、玄圃は崑崙山の上にあるとされた仙人の庭です。羅浮は広東の羅浮山で、隋の趙師雄が梅の精に出会ったという伝説で、梅の名所として知られます。暗香浮動、疏影横斜は、北宋の林逋が詩「山園小梅」で、梅のほのかな香りと水に映るまばらな枝影を詠んだ名句です。末尾の句は読みにくいところですが、詩に詠まれた趣がここでこそ現実になるという感嘆と読みました。名句や名画の世界を実際の景色の中で味わう体験は、旅や散歩の喜びを深めてくれます。
この章句が説くこと
梅風雅自然詩季節
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