酔古堂剣掃 / 集倩・姮娥寶藥を攜ふ
龍女濯冰綃,一帶水痕寒不耐;姮娥攜寶藥,半囊月魄影猶香。
新字:竜女濯冰綃,一帯水痕寒不耐;姮娥攜宝薬,半嚢月魄影猶香。
書き下し
龍女冰綃を濯へば、一帶の水痕寒さに耐へず。 姮娥寶藥を攜ふれば、半囊の月魄影猶ほ香し。
現代語訳
龍女が氷のような薄絹を洗うと、ひと筋の水の跡は寒さに耐えられないほど冷たく、嫦娥が不死の薬を携えていくと、袋に半分入った月の光は、その影までなお香っています。
解説
水と月の清らかな美しさを、二人の神話の女性に託して描いた一則です。龍女は海の龍宮に住む龍王の娘で、仏典や唐の伝奇にも登場します。冰綃は氷のように白く透き通った薄絹で、龍女がそれを水で洗うさまに、川の流れの冷たく澄んだ光が重ねられています。姮娥は嫦娥とも書き、夫の羿が西王母から授かった不死の薬を盗んで飲み、月に逃げて月の女神になったと伝えられます。月魄は月の光、あるいは月の精のことです。薬の袋に月の光が半分入っていて、その影さえ香しいという表現は、実に幻想的です。神話の女性の気品ある姿を借りて、秋の水と月の冷たく清らかな美しさを描き出しています。昔の人が自然の美を物語で包んで味わったように、身近な景色に物語を重ねてみると、見慣れた風景も新鮮に見えてくるでしょう。
この章句が説くこと
神話月水幻想風雅
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